空襲で焼け出され、親類宅に身を寄せた少年。生活をともにすることになったのは、不思議な「かん」の力を持つ従姉妹と、謎めいた生き物「くだん」であった。この「くだん」が口にする意味深なカウントダウンが実は……。
初読時点で度肝を抜かれた濃厚な読み応えは、再読すればするほど深まるように感じられる。いい意味での後味の悪さは、この物語が決して他人事ではないという警告を突きつけてくる。戦時の日常と蒸し暑い夏を肌で味わいながら、主人公の心情の変化を追体験するひとときは、一生モノの読書体験となった。
レビューを書くことが野暮になりそうでしばらくためらったほどの、見事な名作です。ぜひお読みください!