最終回 アシュリー視点

私の名前はアシュリー・ベルナール。ベルナール公爵家の次女である。

私は小さい頃から天才と呼ばれていた。勉強してもすぐに覚えられたし、運動神経も抜群だった。魔法だって得意だった。同年代の子より優秀だったことは間違いなかっただろう。



両親も私のことを褒めてくれたし、使用人たちにも可愛がられていたし。そして私の姉――アリシア・ベルナールはお世辞にも頭がいいとは言えず、運動は苦手な方だった。

姉は何をやっても平均的で、特にこれと言って才能はなかった。姉に対する周りの評価はあまりよくなかった。



だから、両親はいつも姉のことを見下していた。姉のことを馬鹿にして笑っていた。



それをずっと近くで見ていた私は――凄く嫌だった。否、一時的には姉のことを見下していた時期があった。その頃の私は幼かったこともあり、親と同じように姉を見下すようになっていた。

だけど、成長するにつれてだんだんと姉への見方が変わった。



変わったと言うより……哀れになった、と言った方がいいかもしれない。私は常に優先され、結婚してもしなくてもいいと言われたが、姉は要求され、スペックも釣り合っていない男と結婚しなければいけなくなった。



その名前はエリック・セルヴァンド。女遊びが激しい皇太子殿下の婚約者となった姉のことを憐れんだ。だってあの人は姉のことを見ていない。最初は興味本位で優しくしていたのかもしれなかったが、段々と姉に興味をなくしていったようだった。



そして、ある日突然婚約破棄したらしい。その時のことは詳しくは知らないが。そして婚約破棄した当日にまた婚約者を作った。早くね?と思ったが、そこは突っ込まないことにした。名前はシエル・クラーク。公爵家のご子息だそうだ。



この男のことは悪い噂は聞かない。寧ろ、いい噂しか聞いていないくらいだ。だけど、それは表向きで裏では何をしているのかわからない。エリック・セルヴァンドのような人ではないとは思うけれど。



「アシュリー様」



そんなことを思っていると、あの子――ローラ・クレーヴの声が聞こえて来た。彼女は私と同じ『光属性』の持ち主であり、平民だ。平民な故に、周りからは色々言われているみたいだが、本人は気にしていないようだ。それどころか堂々としていてすごいと思う。



私が彼女の立場なら、きっと落ち込んで泣いてしまうだろう。それほどまでに貴族の世界は厳しいのだ。



「どうしたの?ローラさん」



「い、いえ。何か考え事をされているようでしたので……」



「ああ……。少しだけ昔のことを思い出してたのよ」



そう、これはもう過去のこと。三歳年上の姉に対して同情はしたけどそれだけ。本人が幸せならそれでいいと思うし。エリック様は何か新しい女と上手くいってないらしく、自滅していったけど。



「(……そんなもん、私には関係ないもん)」



私は今の自分のことで精一杯なのだから。まず、今日は――、



「今日の魔法の授業は結界魔法の実践練習ね。上手くいくといいけど……」



「そうですね!お互いに頑張りましょう!」



なんてローラさんが微笑むから私も頑張ろっかなって思えるのだ。



「(私には婚約者なんていらないや。好きな人が出来た時に考えることにするわ)」



その方が絶対楽しいに決まってるし。姉みたいに無駄なことをしなくて済むし。……今は魔法を習うことに専念したいし、結婚する気はないんだけどね?

でもいつか運命の出会いをするかもしれない。



例えばローラはこの学園一のイケメンであり王族であるレオン・メルヴィル様に惚れられてるし。レオン様は私の好みじゃないから別にいいんだけど。個人的には、ニコラス・シャトレ様の方が顔だけ見るならタイプだし。性格は絶対に合わないと思っているけども。



「……でも、まぁ……」



姉みたく、依存されるような恋だけはしたくない。私は絶対に姉みたいにはならない――と、そう心に誓った。



――――――――――――――――――――――――――――


これにて完結です。今回の話は『知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について』と話が繋がっています。


アリシア、アシュリー、シエルは『知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について』に出す予定なので良ければお気に入り登録よろしくお願いします。


URL→ https://kakuyomu.jp/works/16817330665014914994

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【完結】婚約破棄した後に気付いた思い かんな @hamiya_mamiya

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