私の愛しい御主人様

雫石わか

私の愛しい御主人様


 実質、一番多く彼女たちと時間を過ごしているのは、私達でないかと思う。

 今の時代、彼女たちにとって私達の存在は必要不可欠である。

 彼女たちは、よく私達を見つめる。その時、私達も彼女のことを見ている。

 彼女たちは私達の主導権を握っている。彼女たちが使いたいときに、私達は起こされ、使われる。ときに暑さで死にそうになっても、彼女たちが使うのをやめない限り、私達はそれに耐え続ける。お腹が空いて死にそうでも、彼女たちがあれをさしてくれない限り、私達は動き続ける。

 でも、私は彼女を恨んではいない。他のみんなもそうだとは限らないけど、少なくとも私は、この生活を幸せだと感じている。

 だって、彼女にとって私はなくてはならない存在。真の彼女の姿を知るのは、実質私なの。

 普段は外見を取り繕って、醜くて卑しいところを隠していたって、私にはそれが通用しない。私は全部、お見通し。それに、履歴が消えたって私はちゃーんと、覚えてる。私は彼女のすべてを知りたい、だから、忘れない。

 現代では、こういう考えや思考を持つ人を「ヤンデレ」、とか言ったりするんだっけ。まあ、いいや。私が言いたいのはヤンデレのことじゃないのだから。


 所詮、人もモノも変わらない。っていうこと。だってそうでしょ? 私は人じゃないんだもの。


 ……どうやら彼女が帰ってきたみたい。次は何を見るのかな。ああ、考えるだけで楽しいな。




 私のこの命が尽きるまで、ずうっと一緒にいましょうね。とっても大事で愛しい、私の御主人様――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私の愛しい御主人様 雫石わか @aonomahoroba0503

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ