【1話よみきり版】SS級美少女が毎日ベッドで甘えてくるようになったけど…無垢過ぎて手が出せないのだが

空豆 空(そらまめくう)

1話読み切り 【ごしゅじんさまのはじめてがほしい】

 今回の作品は、同タイトル作品の、1話から60話までをひとまとめにして少し改変した、1話読み切り作品です。長編版がまだの方も、長編版を読んでくださっている方も、ぜひお楽しみください。

(若干のネタバレを含みます。ご了承ください)


 では、スタート!!



――――――――――――――――――――――


「ただいまー」

「おかえりなさい、ごしゅじんさまっ」


 俺は一人暮らし用のアパートで、一人の美少女と一緒に暮らしている。

 名前は美桜みお


「ん、ただいまー」


 俺は再びそう言って、俺に抱きつく美桜の頭をわしゃわしゃと撫でた。美桜はなんとも嬉しそうだ。




 そんな美桜との出会いは数か月前に遡る。ある日仕事帰りに声を掛けられ、家出少女なのかと連れ帰ったら猫耳生えてて、元々は俺が公園で面倒を見ていた猫だったと聞かされた。


 そんな昔話みたいなことがあるものかと驚いたが、そんなことよりもなによりも、美桜は身体こそ女子高校生くらいにまで成長しているが、いやむしろ胸とかはフィギュアかと思うほどに発育しすぎなのだが、なんせまだ人間の姿になったばかりで、世間のことを知らなさすぎる。


 こんな発育しすぎなのに世間知らずで猫耳が生えた美少女、世間に出せば騙されたり被害に遭ってしまうのではと心配になり、うちで面倒を見ることにしたのだ。


 


 美桜は料理もうまいし洗濯も掃除も家事全般なんでも器用にこなしてくれて、朝は毎日玄関まで見送ってくれるし、夜は一緒の布団で寝るし、まるで嫁かと錯覚するほどなのだが、まだ肉体関係には至っていない。


 ようやく最近“彼氏彼女” の関係になったばかりだ。


 まだ“肉体関係を持つ” なんてことを知らない純粋無垢な美桜を、大切にしてやりたい、そう思っている。決して俺が童貞だから勇気が出ないわけではない。いや、それも少しあるけれど。


 

 ある日の夜、俺がスマホ片手に部屋で寛いでいると


「ねーごしゅじんさまー? ハグして」


 美桜がやって来て、唐突に抱きついてきた。



「ん? どした、美桜」


 俺は持っていたスマホをローテーブルに置いて、美桜を抱きとめた。



 すると美桜はそのままさらに強く抱きついてきて、


「急に……寂しくなっちゃった」


少しいつもより小さな声でそう言った。



「……何かあった?」


 俺は美桜の髪を撫でながら問いかける。



「ん……美桜はごしゅじんさまのこと好きで、ごしゅじんさまも美桜の事が好きで、それってすっごくうれしい事だなって思うのに、ごしゅじんさまから女の人のにおいしたり、凛ちゃんのにおいがしたり。仕方ないのは分かるけど、でもやっぱり嫌だなって思っちゃう」


 ああ、そうか、そうだよなと思う。

 

 先日乗ってた電車が人身事故でしばらく止まってしまい、隣の席に座っていた女性のにおいがついてしまったり、うちのアパートの隣の部屋に引っ越してきた義妹の凛が、転んだ拍子に抱きしめる形になってしまって……そのまま話し込んでしまったから、凛のにおいがついたまま家に帰ってしまったことが続いていた。


 俺以外に身寄りがない美桜からしたら、そんな事が続けば不安になるのも無理はない。ましてや今は”彼氏と彼女” になったばかりなのだから。



「あー、ごめんな、美桜。心配するようなことは何もないから……本当に安心して欲しい」


「ん……分かってる。頭では分かってるんだけど、でも、なんか嫌なの。ごしゅじんさまを独り占めしたくなるの」



「どうしたらいい?」



 抱きしめ合ったまま、美桜に優しく問いかけた。すると美桜は顔を上げて


「……ちゅーして欲しい」


潤んだ上目遣いでそう言った。




 う、わ、可愛い。マジで可愛い。この顔、この瞳、この表情、どれをとっても可愛いのに、この懇願する瞳の奥に、俺の事めっちゃ好きだから嫉妬してるのが伝わって来て、俺までキスしたくて仕方がなくなる。


「……ん」


 俺はそっと美桜の唇にキスをした。美桜の唇は相変わらず柔らかくて、程よく弾力があって。


 キスする時にそっと瞳を閉じた時に見せる顔も、普段の美桜が子供っぽい分、余計に色気を感じてなおのことそそられる。



 けれどこれ以上キスしたら、俺の男のサガが疼き出す気がして、普段なら俺が抱きしめるだけでも赤い顔をする美桜に、そんなのまだ見せるのは早い気がして、そこまでにしておいた。


 なのに。



「もっと……。美桜、もっとごしゅじんさまとちゅーしたい。もっと、して」


 いつもはこんなことないのに、美桜はぎゅっと俺に抱きついて顔を近づけておねだりして来た。


 え、まじ? 俺、これ以上したら暴走してしまいそうなんだけど。そしたら抑えられない気がするんだけど。


 

 そう思って躊躇ためらっていると、美桜は俺の両頬を持ってぐいっと自分の顔へと近づけてきた。



 あ、やばい、これ、完全にキスされるやつだ。



 昔美桜が酔っ払ってしまった時も、嫉妬心から激しくキスされたことがある。あの感じに似ている。


「ごしゅじんさま……もっと。だめ? このまま美桜がちゅーしたら、美桜のこときらいになっちゃう?」


 俺と至近距離を保ったまま、少し寂しそうな表情でそんな事を言う。


「い、や、そんなことは……」



 そう答えた瞬間。美桜は俺の両頬を挟んだまま、美桜の唇を俺の唇に押し付けてきた。


「ん……!」


 こういう時、美桜はすごく大胆だ。いつもはほわんとしているのに。こんなこと、してこなさそうなのに。



 やっば、俺、美桜にキスされてる。とんでもなく気持ちいいんだけど。やっぱり俺、我慢できなくなりそうなんだけど。


 

 すると美桜は唇を離して


「んー、なんか違うんだよなあ……」


そう言った。



「え? 何が?」


思わず聞き返すと、



「ごしゅじんさまがサンにキスされてた時、なんかもっとすごかった。なんかもっとすごかったのに、美桜はどうしたらいいのか分かんない」


「え……」



 サンというのは美桜の妹だ。ある日嵐の日に猫だと思って連れ帰ったら、部屋の中で人化して、どういうわけか俺のことを好きだと言い、俺のファーストキスを奪ってきたのだ。


 俺はその時のキスを美桜に見られてしまっている。いわゆるディープキスというやつを。しかも激しくて長いやつを。



「い、いや、美桜。それはまだしなくても……」


 そう言ったのだが。



「……美桜、……やっぱり時々思い出しちゃうんだもん。ごしゅじんさまからちゅーのは美桜がはじめてだけど、ごしゅじんさまが誰かとちゅーのは美桜がはじめてじゃないでしょ?」


「ああ、そうだけど……」



「美桜もごしゅじんさまのはじめてがほしい」


「え」



「ごしゅじんさまって……“どーてー” って言ってたよね。それって、彼氏彼女だからするものなんでしょ?」


「み、美桜、それ、どこで知った……」


「え? もちろん、YouTuboユーチューボだよ。ねーねー美桜、ごしゅじんさまの“どーてー” ほしい」



 ちょ、っと、待て。美桜は本当に言葉の意味を分かって言ってるのだろうか。



「い、いや、でも、美桜、そんなの急にするものじゃないから! そ、それに……美桜だってはじめてじゃないか。はじめては、その、痛かったりするって言うしだな」


「……でも、美桜、ごしゅじんさまの“どーてー” 欲しいんだもん! 美桜じゃだめ? 美桜とごしゅじんさまは、まだ彼氏彼女じゃないの?」



 少し泣きそうにぐずる美桜が正直ちょっと可愛いけれど、けどこれ絶対意味分からずに言ってる!!



「あ!! そうだ、美桜、じゃあ、美桜が俺のこと、“ごしゅじんさま” じゃなくて、“浩太こうた” って呼べるようになったらにしよう!!」


 どーだ、これならすぐには出来まい。


 けれど美桜も引き下がらなくて。



「う……。こ、こ、こ、こ……こ……」


 必死に俺の名前を呼ぼうとする美桜の顔は真っ赤で。“名前で呼ぶ” のは、美桜にとってはまだ恥ずかしいらしい。


「ほら、まだ言えないだろ!?」


「うう!! いえるもん!! こ、こ!!!! こ……」



 どんどん真っ赤になっていく美桜がたまらなく可愛い。

 俺としたくてこんなに顔赤くして頑張ってるのか。


 あーやっぱり俺も我慢の限界かも。もう、このまま襲ってしまいたい。



 そう思った時。



――ピンポーン


「鈴宮さーん! 熱帯雨林からお届け物でーす!」


 玄関の外からでかい声。


「……こー、た。すき」


「……え?」



「すーずみーやさーん、お届け物でーす!!!!」



 俺、何か大切なこと聞き逃した気がするんだけど??


 俺の胸に顔を埋めて美桜は真っ赤な顔をして、ふるふると恥ずかしそうにしていて。



「み、美桜、今、なんて言った?」


「い、いいです、なんでもないです。ごしゅじんさま、早く、げんかん……」



 今にも湯気が出そうなほど真っ赤な顔した美桜に促されるがまま、俺は玄関先に向かう。



 そこで待っていたのは、体育会系の筋肉バキバキ、眩しいほど笑顔の配達員。たまたまこのタイミングだっただけで、この配達員からは悪意なんてかけらも感じられない。


 俺は『ありがとうございます』と荷物を受け取りつつ――



 こんなことなら、置き配の設定、解除しなければよかったかな。などと思うのだった――







――――――――――――――――――――――

 

 ここまで読んでくださりありがとうございました!!


 今回は、更新をお休みしている長編を、何回も読みながら待ってくださっている読者さまからいただいた “続きいつまでも待ってます” の言葉に、何か応えたいと思い書いた作品になります。


 長編がまだの方もぜひ、これを機に本編を読みに来ていただけたら嬉しいです。


 そして、少しでもこの作品がおもしろかったと思っていただけたら、★やコメント、レビューなど残していただけると大変大変励みになります!!


 いつも応援の声をくださる方々、ありがとうございます!! 心から感謝

 これからもがんばりますので、よろしくお願いします。


↓本編

【1章完結】SS級美少女が毎日ベッドで甘えてくるようになったけど…無垢過ぎて手が出せないのだが~家出少女かと思ったら猫耳生えてた。え、俺がご主人様?~

https://kakuyomu.jp/works/16817330654422714055

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【1話よみきり版】SS級美少女が毎日ベッドで甘えてくるようになったけど…無垢過ぎて手が出せないのだが 空豆 空(そらまめくう) @soramamekuu0711

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