月城祥真

「いや、前置き長すぎ。で、そいつがどうせ萩原なんだろ?」


 いまいちオチのハッキリしないところで耐えかねた俺は思わず口を挟む。

 カメラの話が出てきた時、丁度萩原と出会ったときの事を思い出していた俺は彼とこの話を関連付けない理由が無かった。


「つっこまずに聞いてくれてありがとな。そうなんだよ、結構面白い出会い方だよな?」


「まあ、な」


 俺ともあんまり変わらないような……。と思いつつ、山本の場合は憑いてるだなんて言われてしまうんだから俺の方がマシか、なんてどんぐりの背比べ。丁度良い暇つぶしができて俺的には満足だった。


「にしても、凄いよな萩原。そんな力持ってたら俺も皆のこと盗撮しちゃうかも」


「そっか、撮らないと視えないんだもんな。あー、納得」


 だから俺の事も盗撮していた、俺に霊が憑いてないか視てくれていたという事実に俺は今気づく。彼の盗撮もちゃんと意味のあることだったのだ。

 山本も微妙なラインで萩原のことを気にしている俺に分からせるようこの話をしてくれたのだとも。


「でさ、その力まだ面白いところがあってさ。その時は俺もハッキリ聞こえたんだけどさ、これも本人の能力か何か知らないけど、憑いてる人だけ萩原のシャッター音が聞こえるんだって」


「……え?」


「あ、旭!お前どこ行ってたんだよ~」


 教室の入り口に萩原の姿を見つけたであろう山本が席を立ち、萩原の方に駆けていく。俺が最後の山本の言葉に蒼白になったところで、やってきた萩原に声をかけられる。振り返り、彼に顔を合わす。

 俺を見つめる萩原が、やけにニコニコしている風に見えるのは気のせいだろうか。

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君を撮りたい ねむり凌 @0nemu_kkym

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