山本俊介
俺はその頃、だから中三だな。その時はサッカーに打ち込んでたんだ。県大会に向けて部活頑張ってたんだよ。え?今もだって?いや、それはそうなんだけど。今は置いておいてくれ。
それでその日は俺、練習試合でこっぴどく怒られちゃって、結構イライラしてたんだよね。俺のミスだからしょうがないんだけどさ、そういうもんじゃん。
その時に聞こえたんだよ。少年の声で「君、ついてるね」って。
俺さ、そのときどんぴしゃで今日はついてねぇなって思ってたから、誰かも分からないその声に反応しちゃって。「はぁ?」ってガチギレしちゃってさ。今でもアホだなって思う。それでそのまま、その声の主を探したんだよ。商店街みたいなところで、まあまあな大声で叫んじゃったから人の視線もあって結構恥ずかしい状況だったんだけど、その時は気にしてなかったと思う。
俺はもちろんその少年を見つけたよ。電柱の裏に隠れてたんだけど、明らかに俺を見る目が違かったからすぐ分かったね。そのまま近寄って「さっきのはお前か?」って言ったら、そいつ「うん」って言うんだ。素直な奴だよな。
俺はそのまま問いただしたよ「ついてるってどういう意味だ」ってな。
そいつ俺がここまで怒ってるとは思わなかったのか、結構なおびえようでさ、その場所もあってやっと人目が気になりだした俺は、そいつを連れて場所を変えた。確か河川敷かな。その時に見た夕焼け、酷く覚えてるよ。
河川敷で改めて“ついてる”の意味を少年に聞くと、そいつは「そのままの意味だ」って言い放った。よく分からなくなった俺はシンプルに「どういう意味だ?」と聞いた。ここでようやくお互いが勘違いしていることに気付いたんだ。そいつ、俺にずっと「憑いてる」って言ってたんだよ。ほら、幽霊とかのアレ。そっちのついてるそれを知って俺、急に血の気引いちゃって。もうイライラとかもどっか行っちゃってさ。マジで怖かった。
そしたらさ、急におびえだした俺を見てその少年、くすくす笑うんだよ。嫌な奴だよな。でも「大丈夫だ。お祓い行ったらどうにかなる」って言い放つから、今度は俺が笑っちゃったよ。だってさ、こういうのってだいたい「俺が祓ったから大丈夫」とか「今から祓ってあげよう」とか言うだろ?え、アニメの見過ぎ?いやまあ、その時はそう思ったんだ。
もちろん笑う俺を見て嫌な顔されたけど、まあそれもお互いってことでその一瞬で不思議とその少年と打ち解けちゃって。結構くだらない話もしたってわけ。
夕焼けも段々暗くなって、もう少しで完全に暗くなるって所でそいつは急に俺に「立って」って言い出した。疑問に思いながらも俺は立ち上がってそいつの方を見てた。するとパシャって乾いた音が聞こえた。そう、写真だよ。その時はまだ新型のスマホ、二つ目のヤツ、分かる?アレよ。アレを俺の方に向けて一枚写真を撮ったんだ。
「君、カエルでも轢いたことある?」
次にそう言ってきたそいつには流石に驚いたね。俺、確かに一回自転車で轢いたんだよ道ばたに干からびてたカエル。生きてたのか死んでたのかは分からないけど、確かに俺は轢いた事があった。そいつ、誰にも言ってないことピタリと言い当てたんだよ。怖いよな。
そいつは次にこうも言ってきた。
「左足が完全にやられてるから、軸足がそっちだったら考え直した方良いかもね」
こいつが言ってることは確かだったんだ。
俺はその日の試合も上手くボールを蹴れなくてミスをした。確証なんてどこにも無いのに俺はそいつの言葉を信じることにした。そしたら俺、すごいことに急にサッカー上手くなっちゃって。自分でもビックリしたね。多分そいつが視てくれたお陰なんだと思う。じゃなきゃ俺今もサッカーやってないかも知れないな。
その日はそれで終わったんだけど、次の機会でそいつと出会ったとき聞いたんだ。丁度俺もサッカー上手くいってるときだったから感謝の言葉も伝えるためにね。そしたら驚いたよ。そいつ、どうやら写真を撮ると視えるらしいんだ。どんな霊に取り憑かれてて、その霊によってどんな被害に遭ってるってことがさ。いやー、ほんとに凄い力だよな。霊感の中でも上位なんだろうなきっと。
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