幼馴染の美少女が猫ちゃんになってしまったが、猫ちゃんのお世話を知り尽くした俺に任せてくれ! グヘヘヘ猫ちゃん可愛いなモフモフモフ!
#9 新しい朝だよ猫ちゃん。おはよーおはよー! 今日もかわいいねえイヒヒヒヒヒヒ!
#9 新しい朝だよ猫ちゃん。おはよーおはよー! 今日もかわいいねえイヒヒヒヒヒヒ!
自分がどこにいるのか、わからなくなる時がある。
さっきまで脳裏に描かれていた光景は果たして夢だったのか、現実なのか。
「おはようございます。幸人さん」
そんな俺の寝ぼけた頭は、聞き慣れた少女の声を聞いて一瞬で覚醒した。
「静雫!」
ベッドから起き上がる。
そこには既に私服に着替えた静雫がエプロン姿で立っていた。
彼女は上機嫌にクスリと笑う。
「春休みだからっていつまでも寝てちゃ駄目ですよ」
「お前」
そんな静雫を見て、俺は驚きながら言葉を吐き出す。
「人間に戻ったんだな」
「まあ、それはそうなんですけど」
言って彼女は自分の頭を指差す。
「完治したとは言い難いですね」
彼女が指差す先に視線を向けると、静雫の頭には可愛らしい猫耳が!
ね、猫耳があああああああああ!
猫耳! 猫耳! 可愛いいいいいいいいいいいい!
「か、可愛すぎるううううううううう! ねねねねねねこねこねこねこちゃん!」
「ああ、もう! 朝から壊れないでください! 本当に猫が絡むと面倒臭い人ですね!」
頬を赤らめ、照れ怒りを浮かべながら彼女は俺に背を向ける。
「もー、ちゃんと目を冷ましてからリビングに来てくださいね。朝ご飯用意して待ってますから」
言って寝室から出ていこうとする彼女に俺は言葉を投げた。
「宵闇の魔女!」
その名前を呼ぶと、静雫の足が止まる。
こちらに背を向けたままの彼女に俺は言葉をぶつける。
「我ら魔王軍との戦いはまだ決着がついてないぞ。いつか魔王ジェノサイドファイナルトルネード・オブ・ザ・ライトニングノヴァ様がこの世界を猫色に染めてやる! 首を洗って待ってな!」
そこまで言い切ると、静雫は肩をすくめ顔だけこちらに振り向いた。
「そーいう子供の遊びはもう卒業したんですよ。幸人さんのばーか」
べー、と舌を出してそう言い残すと彼女は柔らかく笑いながら寝室を出ていった。
ノリノリで返してくれることを期待した俺は胸に一抹の寂しさを覚える。
「娘の成長を見守るパパって、こんな気持ちなのかな」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「えー! でも人間に戻れたならいいじゃん静雫!」
俺達が部屋を出ると、玄関先でバッタリ深白と遭遇した。
「その節はお世話になったね。一応、礼は言っとく」
「素直じゃないよね静雫はー。本当はだいちゅきな幸人お兄ちゃんとの同棲生活をもっと続けたかったんじゃないの?」
からかう深白に対し、静雫は呆れたように言葉を吐き出す。
「深白も一度ネコナになってみればあの辛さがわかるよ。人としての尊厳が奪われる屈辱が」
「残念でしたー。ウチはワクチン四回打ってるもんねー」
二人の微笑ましい会話を聞きながら、俺は郵便受けを確認する。
おっ、新聞きてるな。
「だからウチは絶対ネコナになんてなりま――」
そこで深白の声が途切れる。
えっ? まさか!
嫌な予感に振り返ると、そこにあったのは静雫の驚いた顔、そして地面に散らばった深白の衣服だった。
その衣服の下から、愛らしい子犬が顔を出す。
「わ、わうん?」
子犬は状況が掴めない様子で、困惑の鳴き声を放つ。
俺が郵便受けから取り出した新聞の一面にはこんな文字が踊っていた。
新型イヌナウィルス、国内で感染報告多数、と。
俺達の看病ライフはまだまだ先が長そうだった。
幼馴染の美少女が猫ちゃんになってしまったが、猫ちゃんのお世話を知り尽くした俺に任せてくれ! グヘヘヘ猫ちゃん可愛いなモフモフモフ! 黒足袋 @kurotabi
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