第20話 お姫様は狩りに行く

翌日、メルとアラン王子は、王都に視察に行くことにした。

昨日仮設テントを大量に建てたが、それだけで済ませないと考えたからだ。

秘書官のジョルノとネネが文官達を引き連れ同行した。

警護は、シャドウ、ルリアナ、リリアナだが、ルリアナ、リリアナは実質リヴァイアのお守りだ。

シャドウが警護するのは、共に付いてきたガルーダ王国の姫二人だ。


メルが言う。

「リヴァイア〜折角の王都視察です〜美味しい出店が沢山あるわ〜私達の視察はつまらないだろうから〜出店を巡ってきなさい〜。

ルリアナ〜リリアナも一緒に〜。

お小遣いは〜これね〜!

リリアナに渡しておくわ〜。

いくらでも〜使って良いわ〜。

リヴァイア〜お腹いっぱい〜食べてきなさい。」


メルは、お金が入った袋をリリアナに渡す。


リヴァイアが言う。

「姫姉ちゃん!行ってくるのだ!

何食べようかな〜?!

ルリアナ〜リリアナ〜行くのだ!」


ルリアナが言う。

「リヴァイア。手を繋いでおきましょう!

リヴァイアを野放しにしたら、きっと迷子になります。」


リヴァイアは、ルリアナとリリアナに挟まれて手を繋がれる。


超絶美女二人に手を繋がれた美少女。

知らない者が見たら、必ず目を止めてしまうだろう。絡む者もいるだろう。

しかし、ここはトーアの王都。

トーアの民は、皆この三人を知っている。

三人とも強者ということを。

その前にメル姫の従者と言うことで、この三人に危害を与えようとはしないのだ。


三人を送り出したメル達は、まず仮設テントに向かう。


城から派遣された給仕が炊き出しを行なっていた。


メルが給仕に声を掛ける。


「ご苦労様〜。何か困ったこと〜気になること〜ありますか?

食料で必要な物があれば、文官も来ています。

言ってください。」


給仕は、姫と王子に膝を折って頭を下げようとするのをアラン王子が止めた。

給仕は、笑顔でメルに答える。


「姫様。お気遣いありがとうございます。

困ったことはございません。

皆、秩序よくこうして並んで待ってくれます。

気になるのは、ガルーダ王国の民の皆さんの栄養状況でしょうか。鉄分が不足気味かと。

話を聞く限り、国を追われてから肉をほとんど口にしていないとのことでした。」


メルは、ネネとジョルノを見る。


すると、ネネとジョルノが文官達に城の肉の在庫を確認しだした。


メルが給仕に言う。


「今〜肉の在庫の確認をしてますが………そうですね〜今日〜パッと狩ってきましょう。

グレートビッグボアや〜火鳥なら〜私達なら〜容易く狩れますから〜。

ネネちゃん〜ジョル君〜肉の在庫確認は良いわ〜狩ってくるから〜。

昼から処理する人材の確保をお願い〜。

給仕さん〜お野菜などは〜どうなの〜?」


「いつまでとわかれば良いのですが……。」


「そうですね〜まあ〜国を取り戻したところで〜落ち着くまで〜少し掛かるだろうし〜

アラン〜一ヶ月くらいかしら〜。」


「……まあ、それくらいは見ておかないとダメだろうな。

給仕よ。1日の野菜の使用量、だいたいわかるであろう?

それを文官に言ってくれるか?」


そう言ってアラン王子は、文官を見る。

文官が給仕に聞き取りを開始したのだった。


アランがメルに言う。


「メル。ボアでも良かろう?

近衛騎士団に狩らせに行かそうか?

近衛騎士団にはグレートビッグボアは無理でも、ボアなら。」


「アラン〜。この数の人達を賄うのよ〜ボアでは〜何百頭も狩らないとダメだわ〜。

グレートビッグボアなら〜その10分の1の数で〜お釣りがくるわ〜。

シャドウ〜後で〜狩りに〜行きましょう!」


シャドウが言う。

「ハハハッ!姫様!行かれる気ですね!

婆やに叱られますぞ。

ルリアナとリリアナ連れて行って来ますよ!」


「えっ!シャドウ〜私も〜行きたいわ〜。

久しぶりなのよ〜。

婆やも〜人道支援なのだから〜ダメとは言わないわ〜。」


「ならば姫様。汚れてもよろしい服にお着替え下さいよ。

ドレスを汚したほうが、婆やが怖いですから。

王子は、留守番願いますね。」


「フフフッ。わかっている。

其方達の狩りに付いて行ける訳がなかろう!

それでは肉の件は任したぞ。

では、次へ行こう。」


仮設テントの中心に、実は診察所を作っていた。


長い船での生活で体調を崩している者が多かった為、医療に力を入れているトーアならではの気遣いであった。


トーア国病院から、派遣された薬医師が忙しそうに働いていた。


そこには、トーア国病院の院長のマルクも居たのだ。


アランが声を掛ける。


「マルク!忙しそうなところ、すまない。

少し話を聞かせてもらって良いか?」


マルクは、他の薬医師に声を掛けてやってきた。


「これはこれは、王子と姫様!

ご苦労様でございます。」


「かなり体調を崩していた者が多かったと聞いた。ここに、ガルーダ王国の姫二人も来ている。お前から、話をしてやって欲しい。」


「はっ!

どうもお初にお目に掛かります。

私は、トーア国病院で院長を勤めております。

マルクと申します。

薬医師という国家資格を持つ者でございます。

それでは、現状を申し上げると子供や赤子、そして衰弱の激しい者は、トーア国病院のほうに運んでいます。

病院で24時間体制で、治療に当たっております。姫様のポーションで危機は脱しておりますが、子供、赤子はまだ楽観視できない状況です。

今、ここで治療している者達は、まだ体力がある者達です。ここの者達は、すぐに回復すると思います。」


メルが言う。


「先程〜給仕から〜栄養状態がどの者も悪いと聞きました〜。

どんな感じなのでしょうか〜。」


「はい。姫様。

そちらのガルーダ王国の姫様達は、わかっていらっしゃいますね。

恐らく、海を渡る前から栄養状態は悪かったものと考えます。」


ここでガルーダ王国の姫の一人が口を開く。

「私は、ガルーダ王国第一王女のアンと申します。こちらは、第二王女のリンです。

おっしゃる通り、ガルーダ王国は王族含め

民は、この一年まともな食生活をおくっておりません。

我ら王族も昨日夜に、トーアの城で頂いたお料理が…………久々のお料理と言えるものでございました。

この一年、パンのみで暮らすのがやっとだったのです。

なので、民にもこうして炊き出しをしていただき、感謝しております。

さらに、栄養状態を考えて、肉までご用意頂けるというお話。

涙が溢れました。

ありがとうございます。」


アン王女とリン王女は、頭を下げる。


メルが言う。

「何故?そこまで〜困窮していたのかしら〜。」


アン王女が答える。

「もともと、肥沃な土地ではないと言うのもありますが、ルシア帝国の侵攻が1番の原因です。

ルシア帝国が一年前にガルーダ王国に対して宣戦布告をしました。

すると、周辺諸国は、ルシア帝国の肩を持つように、今までしていた取引を取り消したのです。

他国からの輸入に頼っていた我が王国は一気に窮地に立たされました。

これが、理由です。」


メルは、厳しい表情で言う。


「周辺諸国とは〜上手くやっていなかったのですか?

ルシア帝国の横暴に共に戦う姿勢を出す国は?!

アン王女とリン王女は〜おいくつですか?

国の王女たる者〜周辺諸国との友好を強固にする為〜嫁入りする手もあったのでは〜ないですか〜?」


「はい。私は、19でリンは、17です。

私もリンもそれぞれ嫁入りする予定でした。

しかし、ルシア帝国が宣戦布告を表明した瞬間に破談となりました。

どの国もルシア帝国が怖いのです。

それだけ、武力差があるのです。」


メルは、二人に頭を下げた。

「ごめんなさい〜。大変失礼なことを〜言いました〜。

お二人は、王女としての〜役目を〜果たそうとされて〜いたのですね。お辛かったでしょう。

わかりました。」


メルは、涙を流したのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その後、メル達はリヴァイア達の帰りとともに、一旦城に戻った。


そして、メルとシャドウ、ルリアナ、リリアナは、森へと狩りに出かけたのだった。


「皆んな〜いっぱい狩るわよ〜!

ガルーダ王国の民達に〜お腹いっぱい食べて貰わないと〜。」


ルリアナが言う。

「姫様。取り敢えず、火鳥とグレートビッグボアですね!

私とリリアナが火鳥を担当します。

姫様とシャドウ様はグレートビッグボアをお願いします。」


シャドウが言う。

「1時間も狩れば充分だろう!

1時間後、ここに集合だ。

良いな。

では、姫様参りましょうか。」


二手に分かれて狩りに狩りまくったのだった。


そして、1時間後王都に戻ったメル達は、仮設テントの炊き出し場所にやって来て獲物を魔法袋から取り出した。

山のように積まれるグレートビッグボアと火鳥。

ネネとジョルノが手配した処理する者達が一斉に処理に掛かる。


炊き出し場所に沢山の炭火が用意されていく。

その上に鉄板を置いて、処理の終わった肉を焼いていく。

肉の焼ける香ばしい匂いと煙が仮設テントに流れていく。

ガルーダ王国の民達は、その肉が焼かれる光景を大人しく眺めていた。


ガルーダ王国のアン王女とリン王女は、給仕に混じり肉を焼いていた。


そして、アン王女とリン王女が民に言った。


「皆さん。トーア国に感謝しましょう。

沢山の肉をご用意してくださいました。

子供から順に取りに来てください。

沢山ありますから。

おかわりもできますよ。

皆には、本当に我慢をしいりました。

しかし、もうすぐそれも解決します。

トーア国の皆様にお力を貸していただいて。

感謝を忘れないでください。

我らガルーダ王国は、トーア国に助けられたのですから。」


メルもアラン王子も、肉を焼いていく。

そして、メルが並んでいた子供に、皿に山程乗せた肉を渡す。


「トーアの姫様!ありがとうございます!

こんなにいっぱい!

食べれるかな〜?」


「ふふふっ。食べれるわよ〜ゆっくり食べなさい〜。

お腹いっぱいになるまで〜焼いてあげるから〜!」


メルのその言葉を聞いたガルーダ王国の民は、歓声を上げた。


陽が落ちはじめ、薄暗くなった王都。

しかし、この仮設テントの炊き出し場は、炭火の赤い火で、ほんのり明るい。

ガルーダ王国の民は、肉を食し、明るい表情を見せるのだった。



     ー 第二章 完 ー


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いつも応援ありがとうございます!

次回から第3章東大陸編になります。

これからも応援よろしくお願いします!


メルの10歳のときの物語のリニューアル版も投稿中です。

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こちらも、良ければ読んで頂けると更に楽しんで頂けると思います。

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遺伝の力で世界平和を!創造魔法が凄くて天使化まで!お姫様は世界最強! ヒロロ @takuhiro3130165

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