第18話 魔王は倒された

 本丸、そういう名称ではないが、と言う概念の方が説明しやすい、に入ったシウン達は、魔族兵達の死体の山を傍らに見ながら進んだ、駆け抜けるように。魔力の大きな発動が続く方向はすぐに分かったので、そちらに真っ直ぐ向かった。


 こういう道、通路等は曲がりくねって作るものだが、真っ直ぐに駆け抜けていけた。待ち構える施設なりがあったが、シウン達の感覚では大雑把過ぎた。魔族は、自己の、特に魔王以下幹部クラスの魔力、戦闘力に依存する傾向が強いため、築城術はなおざりなのだ。野戦の戦略、戦術もこれよりましな程度でしかない。


 ベアキャットを初めとして、サイウン達が魔王と戦っていた。魔王を守る親衛隊も、かなり数を減らしているようだったが、まだ健在で、ベアキャットが押し気味に戦っているようには見えたが、予断は許されない状況だった。


 そのベアキャットの応援に行く前に、倒れている人間、亜人達が目に入った。彼らを助け起こすと、ベアキャットを追うように、シウンを突き飛ばして、駆けていった勇者とそのチームのメンバーだった。ほとんどが息がなかった。わずかに、狼尻尾と狐尻尾の獣人の戦士だけが何とか回復力魔法で命を取り留めることができた。


「あんのをクソ勇者…勇者様を。」

と無念そうに、その言葉を喉の奥底から絞りだした、狼系獣人女は。

「シデン。こいつは守ってやれ。」

「誰からです、主様?」

「ベアキャットからだ。」

 彼らがベアキャットにやられたかは分からなかったが、"手助けせずに戦わせて、不利になったところで、後ろから・・・。魔王も呆れたかな?"

「いいのか?」

「とりあえず、魔王を倒すことが先決ですから。」

 とシウンは飛び出し、

「ベアキャット殿。雑魚は私が引き受けます。魔王に集中して下さい。」

 礼の声などはなかった。彼と彼のチームは全て、魔王攻撃に集中し始めた。魔王の親衛隊達をシウンが相手にし始めて、彼に続く者達も呆れながらもそれにしたがった。

「みんな。魔王に加勢させないようにすることに専念してくれ。倒すことは二の次にして、力を温存するように。ちょっと難しいが、後の用心だから。」

 シウンが、魔王と激闘を演じているベアキャットの方を、意味ありげにチラっと見る素振りを見せると、全員が納得したようだった。

 シウンは、そう言いながらも、目の前の一体を剣に纏わせた魔法の斬撃で真っ二つにすると、一体倒しては、チームで苦戦したり、危ない場面になっているメンバーの援護にかけずり回った。もちろん、全員に支援魔法を送っている、その間も。


 ベアキャットは、サイウン達の支援を受けて、彼女らの危機には目もくれず、それどころか度々盾にして、その時、必ず、"え?シウン?"、彼女らを援護する、そして危機を脱することができた、魔法攻撃があった。畳みかけるベアキャットの攻撃に魔王は防戦一方になり、さらにサイウン達の攻撃が加わり、一瞬好きができた。そこをつかれて怯んだところに、ベアキャットの最大魔力を込めた魔法攻撃を受けて倒れた。渾身の反撃も、サイウン達により外され、ベアキャットの聖剣で刺し貫かれて、ついに絶命した。


「勇者。ベアキャット様が魔王を倒したぞ!」

との叫びが全軍にもたらされた。


 ベアキャットからは、凄まじい殺気が感じられたが、シウンに従う騎士達、さらに駆け付けてきた有力諸国の騎士達と幹部を見て、身構えるシウン達に、ベアキャットは、

「勇者ベアキャット殿。魔王討伐ご苦労様でした。」

と頭を下げるシウンに何も言葉をかけず、何もせず通り過ぎた。

"取り合えず、ここは何とかしのけだな。"とシウンは思った。スピット達の顔を見ると、"?"と感じるものがあった、一瞬でそれを思わせるものは消えたが。。


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劣化ハーレムと交換されたけど 確門潜竜 @anjyutiti

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