エピローグ もう少しだけ、このままで――

 久しぶりに二人で歩いているから、もちろん会話なんてスムーズにできない。


 仲良かった親友が久しぶり、ならできるんだろうけど、1度仲違いした関係性だから。


 けど今は、この沈黙ですら心地良い。そう思えるようになった。そう思えるようになって良かった。


 けど、この沈黙が心地良いからって、ずっと続けるわけにもいかないよな。


 謝らないと。勝手に決めつけで、舞の反論の1つも聞かずに勝手に縁を切ったこと。


「舞」


「何??」


「あの……。勝手に、1枚の写真を見ただけで浮気したとか決めつけて、舞たちを悪者にして。本当に悪いことをした。ごめん」


 うまく言葉が出てこなかった。けど、なんとか紡いだ言葉。伝わってほしい。


 緊張、不安。けどそれを思ってるのは舞も一緒だったみたいで。


「……こっちこそ、ごめんね。紛らわしいことして」


 声が震えながら、謝ってくれた。悪くないのに。僕が絶対わるいのに。


「……いや、こっちのほうが悪かったよ。ごめんな」


「私のほうが、申しわけないことをしたよ!?」


「いや、僕のほうが悪かったんだ!!」


「私!!」


「僕だ!!!」


「「……ははっ」」


 お互いにムキになって自分の非を主張するのが面白くて。二人で同時に笑ってしまった。


 そう、こんな関係が心地よかったんだ。こんな関係が楽しかったんだ。


「まぁ……。両方悪くないってことでいい?」


「そだね……」


 お互いのことを責めない。自分のことも責めない。そういう合意でいいだろう。


「ねぇ。蒼。1つ、お願いがあるんだけど」


「なんだ??」


 できることなら、叶えてあげたい。悪いことをしてしまったから。


 自分のことを責めないって話になってたけど、全然話せなかったこの期間を、埋めたいって思ってる。


「……また、になってくれますか……?」


 ……カップル……。か。


 え? カップル? 偽、ってついてなかった気がするけど。


「カップル?? 偽、じゃなくて?」


「……あっ……! 偽!! 偽でもいいからッッッ!!!!」


 偽ってつけるのを素で忘れていたのか。それとも、また別の意味が……。


 まぁ顔を赤めて言っている感じ、多分後者のほうが正解なんだろう。


 けど、僕は。まだその気持ちに対する覚悟ができていないんだ。ヘタレ、って言われてもいい。


「……舞。偽、カップル。またなってくれるか??」


「……! うん、喜んで!!」


 今はとりあえず、偽カップルで。この心地いい関係を壊したくない。そんな僕の勝手な希望だ。


「……けど、偽って言葉、とってもいいんだけどなぁ……?」


 舞は、もう僕への好意を隠す気はないみたいだ。これからグイグイ来るのかもしれない。


 それはそれでいい。学校では偽ってついてないカップルを演じてたし、まだこれからも演じるんだろうから。


 けど、学校外では――




「舞。――もう少しだけ、このままで――」




 僕の願いを、聞いてくれたらいいな。









 _________







 読んでくれてありがとうございます。

 愛してくれてありがとうございます。


 このあとの展開は、読者様にお任せします。一波乱あってもよし。このまんまラブラブしてもよし。


 いつ、どのタイミングで付き合うのか、はたまた付き合わないのか。これらは全て、読者様が決めることができます。


 このあとの物語は、読者様自身で。


 それでは、ここまでのご愛読、ありがとうございました――。

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【完結済】もしクラスで一番可愛い女の子と偽カップルになったなら?〜物理的距離、ほぼ夫婦。身体的距離――まで縮めて来るなぁ!!〜 如月ちょこ【街モデ】【ダンざま】連載中 @tyoko_san_dayo0131

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