第25話
やっぱりだ。舞はそんな表情をしている。京極は、怒りを殺しているかのようだ。
僕に申し訳ないって思っていたのだろうか。仕方がないことだ、気にしてないとあとでいってあげよう。
「……で? 僕と仲良くなりたかったからしたのか? ただそれだけの理由で?」
「……うん」
「……お前は、お前はなにをしたのかわかっているのか?」
こんな欲望のために僕達の関係を、そう僕達の関係を――
「僕達は、“偽”カップルなんだから。わざわざこんなことをする必要なんてなかったのに」
――僕達の関係を、暴露しなくちゃいけなくなるんだから。
「……えっ?」
「僕達は偽カップルだったんだよ、だから宮西。お前がやったことは全部無駄だった。ただいたずらに、僕達の関係を傷つけただけなんだよ!」
「…………」
「蒼。ちょっと冷静に」
感情的になってしまった僕のことを舞が止める。
あぁけど。もう止められない。止まらない。1度言い始めてしまったことを止めるすべはない。
「宮西、お前はどうするつもりだったんだ? このまま、自分のやったことを隠して。僕とずっとと友達でいるつもりだったのか?」
「……八神?」
京極がなにか言っている。
「よくそんなにことをしようと思ったよな、ほんとに信じられねぇ! まじで!! お前は……!お前の考えは、過去の僕がやってたかもしれないことなんだよ!!」
「なにを言ってるの? 蒼?」
風向きが変わった。そのことを感じ取った舞が言う。
「中学の時の僕はな、好きな人がいたんだ。けどその人には彼氏が居て。その人たちの間になんて割って入れるとは思わなかった。だから、なにか偽物の証拠でも取ってやろうと思ってたんだよ。……結局、行動には移せなかったんだけどな」
僕の告白に、あとの3人は固まっている。
「だから……だから、僕は責める気になれないんだ。いや、すでに責めてるかもしれない。怒ってるかもしれない。けどもうこれ以上は……。僕が一番、痛いほどその気持ちがわかってしまうから……」
また沈黙が続く。舞も、京極も僕が怒ると思っていたのだろう。そして彼女たち自身も怒っているだろう。
けど、僕が先にこんな告白をしてしまったから。何をいったらいいのかわからなくなってしまっているのかもしれない。
「なぁ、宮西。お前は、自分のやったことを認めて、謝れるのか……?」
責める必要はないって思ってる。けど、ある程度の区切りはつけないといけないよな……。
「……はい」
「じゃあ……舞と京極に謝ってくれ。僕じゃなくて。この件で一番頑張ったのは二人なんだから」
僕は謝罪なんて求めて――いや、たしかに怒ってはいるけど。二人ほど迷惑を被ってないと思うんだ。
「……朝神さん、京極くん。本当に、本当にごめんなさい」
宮西が、目に涙を浮かべながら謝罪する。
「……まぁ、ちゃんと認めたなら別にいいんじゃないの?」
「もともと俺はそこまで気にしてるわけじゃなかったしな! ……いいんじゃね?」
ふたりとも、謝罪を受け入れてくれたみたいだ。
ならここからは、僕の言いたいことを言うターンだ。
「じゃあ宮西……。これからも、僕と友達でいてくれませんか?」
「えっ……!?」
「やってしまったことは、取り消せない。たしかに僕達は傷つけられた。でも――友達として過ごして、楽しかったことは変わらないんだ」
僕が、今回宮西を許してあげようと思ってあげた理由も、これが1つあるんだ。
「だから、いいよな……?」
「……こちらこそ、お願いします」
……良かった。受け入れてくれた。
「じゃあ、これでいいよな。解決!! ってことで!!!」
「……まぁ」
「いいんじゃねぇの」
……ということで、1度この場は解散となる。
宮西と京極はそれぞれ一人で、そして僕と舞は――
「久しぶりだね、こうやって一緒にかえるのも」
――二人で、帰る。
________
次話で完結です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます