第73話 カオスなゲームのお誘い
途中になっていた夕食の準備を急いで進めていく。
フライパンに油を引き、いい感じに熱されてくるのを待つ。
そんな時に、俺のスマホが軽快な着信音を響かせた。
「誰だ……って、雨宮か」
表示された名前を見て気が抜ける。
特に約束もしていなかったはず。果たして何の用だろうか。
フライパンがちょうどいい感じの温度になったのを確認し、肉を投入してから電話に出る。
『あ、もしもしまっつーん』
「もしもし~? どうした?」
『今日さ、まっつんも玲奈ちゃんも暇? よければ一緒にゲームでもどうかなって』
遊びのお誘いか。
是非とも乗りたいところではあるけど、残念ながら既にお肉を焼き始めてしまったところ。それも人数分しか用意してないから遊びに行くのも来られるのも難しい。
「暇だけどゲームは難しそう。今ご飯の用意してる」
『あー、暇なら問題ないよ。やろうって話してるゲームはオンラインのやつだし。通話繋いでやろうってお誘いだから』
「なるほどね」
それなら家からでも問題はなさそうだ。参加一択かな。
『他にしのしのたちにも声かけてるから、盛り上がると思うよ~』
篠原たちも参加するのか。たしかに盛り上がりそう。
「で、何するんだ?」
『まっつんはバカ人狼って知ってる? それやるの』
聞いたことがある。普通の人狼ゲームとほとんど同じルールだけど、村人陣営にバカっていう役職の仕事をやったつもりでいるお馬鹿な者が紛れ込んでいるやつ。
動画配信サイトとかでも大盛り上がりで、いつかやってみたいなとは思っていたやつだ。
「そのバカ人狼やるんだ。いいね、買っておくよ」
『それと、もう一つ用意して欲しいものがあってさ』
「ん?」
『お酒、忘れんなよ! 泥酔バカ人狼やるんだからさ!』
雨宮めとんでもないこと企画しやがったな。
ただでさえゲーム内ではバカが引っかき回すというのに、現実でもお酒の力で本物のバカになったやつが引っかき回してくることになる二重トラップを仕掛けてくるとは。
すさまじいゲームになりそうだなと苦笑しつつ、参加の意思を伝える。
『じゃあ、スタートは九時ね! 遅れないでよね!』
「うぃー。玲奈も誘えそうなら誘っておく」
『助かる~』
そのやりとりで通話が切れる。
まぁ、玲奈は参加するのかなぁ……? だいぶお酒に弱いし、あまり乗り気にならないかも。
それはそれで、こっそり後ろからアドバイスもらうとかいうズルとかもできるわけだけど。
「――ねぇねぇ隼人くん」
そんなことを考えていると、後ろから冬華さんが声を掛けてきた。
「わっ! どうしました?」
「チラッと聞いちゃったけどさ……私も参加、いいかな? 確認してみてほしいな」
しれっとお酒のボトルを手にした冬華さんがめちゃくちゃ期待に満ちた目でそんなことを聞いてきた。
この人、やっぱりこういうの好きなんだろうな。
俺としては人数は多い方が面白いと思うし、それは俺以上に雨宮がそう思っているだろう。
雨宮のことだ。面識がないとはいえ、玲奈のお姉さんだっていえばほいほい歓迎してくれるだろう。
「全然問題ないと思いますよ。一緒にやりましょう」
「っ! やった」
冬華さんが小さくガッツポーズを見せるのを可愛いなと思っていると、玄関のドアが開く。
「ただまー! 遅くなってごめーん!」
どうやら玲奈が帰ってきたみたいで、俺は玄関までお出迎えに行く。
「お帰り玲奈」
「ただいま隼人! あ、なんかいい匂いがする」
「今日の夕食は鶏肉を焼いたものにしてるから。お楽しみに」
「わーい!」
靴箱の横に鞄を投げた玲奈がぼふっと俺に抱きついてくる。
その頭を撫でつつ、さっきのことを玲奈にも聞いておこう。
「なぁ玲奈。今日、雨宮たちとお酒飲んでバカ人狼ってゲームをやるんだけど、玲奈はどうする?」
「うっ……お酒かぁ……」
分かりやすく顔をしかめた玲奈に思わず笑ってしまう。
ただまぁ、泥酔バカ人狼は酔っていた方が面白いだろうって感じのノリだと思うし、お酒の強要はなくても普通にゲームだけの参加も……。
「やる! お酒も飲む!」
「え? いいの?」
「うん。お酒も慣れないと」
はい、これでさらなるカオスが確定しました!
ふにゃふにゃ玲奈がバカ人狼なんてやったらもう波乱が巻き起こる予感しかない。正直楽しみすぎる。
「じゃあ、雨宮には参加で伝えとくね」
「よろしく!」
玲奈と、そして冬華さんも参加することになった雨宮主催の泥酔バカ人狼。
どんなゲームが繰り広げられることになるのか、今から九時のゲーム開始が楽しみで仕方ありません。
弟に彼女を寝取られたら、美人な幼馴染と結婚同然の同棲生活が始まりました 黒百合咲夜 @mk1016
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。弟に彼女を寝取られたら、美人な幼馴染と結婚同然の同棲生活が始まりましたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます