赤いシミ【朗読OK】

久永綴和

第1話

 大学に進学したのをきっかけに一人暮らしをすることになった貧乏な俺は少しでも節約するため訳あり物件に住むことになった。

 訳ありの理由は聞かないようにしたがそれは初日で判明した。

 天井に赤いシミがあるのだ。

 サイズはピンポン球くらいなのだが、不思議なことに内見の際はこんなものはなかった。

 とはいえそれ程気になるようなことではないし、これのお陰で安くなっているのだと思えば些細な問題だ。

 それから訳あり物件に住んでいるとは思えないくらい充実した日々を過ごしていたのだが、平穏は長くは続かなかった。

 天井の赤いシミが前見た時よりも明らかに大きくなっているのだ。

 流石に気になってきたので雑巾で拭き取ろうと試みるけど一向に取れないので諦めて無視することにした。

 シミは徐々に広がっていく。不気味なことにそれは見ている間に広がっているということ。

 まるでこちらが見ていることに気づいているかのように。

 しかし、何か問題が起きているとかでもないので気にしないことにした。とはいえ不気味なので適当な理由をつけて数日間、友人の家に泊まることにした。

 そして訳あり物件へと帰る日の夜、大家さんから着信が届く。

 俺の住んでいた訳あり物件がガス漏れが原因で爆発したという報告だ。

 幸いにも怪我人はおらず、俺も友人の家にお邪魔していたところなので被害に遭わずに済んだが、もしも気にせず訳あり物件で過ごしていたらと思うとゾッとする。

 だが、俺はまだ知らなかった。

 友人の家の天井にも赤いシミが浮かび上がっていることを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤いシミ【朗読OK】 久永綴和 @hisanagatoa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ