その10-弓木さんside

 重いコピー機を開けるとランジェリーであった。

 女性ものの、赤い上下セット。下着である。


 この下着をより有効活用したいと思った。

 一旦待とう。ていうか、このコピー機は下着以外出てないのかな。

 まぁ、正直このコピー機なんてどうでもいいんだけど。


「あ、弓木さん、おはよう」

「黒原さんおはよう。今日も早いんだね」

「まぁね、皆結構練習に一生懸命だから、私も早めに行きたいし」

「偉いね、大変前向きだね」

「そうかな、ていうか弓木さんも元気そうだね。なんか、顔つき変わった?」

「そんなこと無いけどね。全然」

「そう?」

「そうそう、全然」

「何が『全然』なのかな…」

 私は私なりに前向きではあるけど、他者から比べたら大したことは無い。

だけど、周りからどう見られたとしても、私にとっては全て初めてのことだから。


 私の下着を黒原さんが見つけてくれたことに、とても驚いた。それに、私にとっては初めてで、私にとっては唯一で、特別な事実だ。


 ただ、それだけだから。私にとっては、初めての友達だから。


「全然、大丈夫、全然!」


 少しでも、私を見つけてくれた人に、私は、手を伸ばし続ける。

(完)

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コピー機とランジェリー 水本エイ @mizumoto_h2a

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