第19話
レイン=イングヴァイは撤退していくセキウリウヲ軍を見送った後、戻ってきた。
「あの放射はお前が撃ったのか?」
戻ってきたレイン=イングヴァイは戻ってくるなり、開口一番で聞いてくる。
「はい。ちゃんと当てましたよ」
「ああ、たいしたもんだ。お前ならここでもやれるかもな」
レイン=イングヴァイは優しく私を見つめて賞賛してくれた。
「ああ。寧ろ、エクシードの扱いならお前よりもうまいな。基本がしっかりとできている」
研究員の代表格の青年も、レイン=イングヴァイを茶化しながら私は褒めてくれた。
だけど、本当は砲撃をちゃんと撃てたことよりも、レインを救えたことが嬉しかった。
今まで一緒に出撃した仲間を、誰一人として助けられなかった私には、それが、嬉しかった。
「ハッ。オレはこんなもんなくても戦えるからな。必要ねぇんだよ」
「なんだお前、課せられた仕事もこなせないのか? 仕方のないやつだな」
レイン=イングヴァイは毒づいて鼻を鳴らすが、研究の責任者は軽く一笑した。
「もうこの任務は終わりだろう? 帰ろうぜ?」
正規軍が出撃して、撤退したセキウリウヲ軍を追撃するのを見下ろして、レインが言った。
「いや、まだ援軍が来るかもしれない。セキウリウヲが完全に撤退するまでは待機だな」
その言葉で私たちは待機をすることになったが、その後、私たちが出撃することはなかった。
それから三日後、ドゥイミヲト連邦の正規兵が進軍してきたセキウリウヲ軍を全滅させたという報告が入り、私たちも撤収することになった。
「憶えておけ。お前にその術を施したやつはお前の幸せを祈っていたってことを……」
別れ際にそう言ってくれたレイン=イングヴァイの言葉に、私は考えさせられた。
これまで私は、死ねないということを呪いとしか思っていなかった。
だけどもしかしたら、これは私に生きて欲しいという両親の願いだったのかも知れない。
そう思えたとき、私はほとんど覚えてもいない両親を思ってまた泣いた。
そして、私はまた、ある決断をして理事長室を訪れていた。
そして次の作戦、私は敵地であるドルキ基地の出撃用のカタパルトデッキにいた。
「今日はこの銃の性能を見たいから、後方支援に徹してね」
「はい」
バインダーになにかを記載しながら指示を出してくる女性の研究者に私は頷いた。
「なぁに、ドルキの軍なんかオレが蹴散らしてやる。お前は見学でもしていろ」
隣のカタパルトから、赤いエクシードを装着した彼が口許に笑みを浮かべて言ってきた。
「はい。頼りにしてます。でも、私の撃つ流れ球に当たらないでくださいね?」
私が冗談半分で言うと、レイン=イングヴァイは鼻を鳴らして出撃をした。
そう、私はこの新型エクシードのテストパイロットになるために、この班に移動したのだ。
ここの人たちは、きっと私が先に死んでも死ぬことはない。そして、私が戦闘で使ったエクシードのデーターは細かく分析されて、これからの人たちの役に立つ。
なにより、背中を預けられるパートナーがここにはいる。
やることは戦闘で、いる場所は戦場だけど、ここでなら私は私らしく生きられる気がした。
「シュリ、出撃します!」
カタパルトで一言研究者たちに告げると、私はレイン=イングヴァイを追い掛けて出撃した。
暗い人工物の短いトンネルを潜ると、前方に白い光が見えてそれは瞬く間に拡がっていく。
そして、私は光の中に飛び出して大空に舞い上がった。
光の外ではすでに戦闘が始まっている。だけどもう恐れるものはない。
ここには、私が欲しかったものがあるのだから……。
輪廻少女 ふんわり塩風味 @peruse
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