第3話 遺書

 俺は久しぶりに盗みを行う。麒麟組事務所の裏口から侵入し隠し金庫を探す。警備員はいないがときどきヤクザが入ってきようとしてそれを敵のヤクザが止めるような形で争っている。結局俺は見つからないようにしないといけないわけだ。


「これが金庫か。」


俺は慣れた手付きで金庫のダイヤルを回しながらある道具を出す。これは金庫の扉を高熱で溶かすものだ。じゃあなんでダイヤルを回したかって?かっこいいからと言う理由で始めたルーティンだ。扉はすぐに溶け中の書類を盗る。この道具はちゃんと金庫だけを溶かすように調節されている。これも相方が作り方を考えてくれたんだよな・・・。俺はすぐに2階の窓から抜け出し走って去った。


 俺はバーに帰ると紅鬼が待っていた。


「お疲れさん。」


「なんだよ、お前偉そうに。」


「無事に書類を奪えたようだな。」


「ああ。気になったんだがこの書類は何が書いてある。」


「旧政府の知られてはいけない秘密さ。」


「・・・、あれ。ならなぜヤクザは政府に有利になると思ってんだ。」


「それはあいつらはこの書類が旧政府の秘密だと知らないからさ。きっと今の政府の秘密だと勘違いしているんだな。」


「・・・、俺が盗んだ意味はあるのか?」


「それは大ありさ。これで抗争の理由はなくなる。情報屋に金庫の中身はヤクザではない誰かが奪ったと言っておいたさ。」


「まあそれなら・・・。」


「というわけで感謝するよ。ありがとう。」


「・・・、お前は幹部Sに何をした?」


「俺は舞白・・・、幹部Sがスラムにいるときに保護をした。そして彼女がパレット本部にいた時俺は彼女を殺した。」


「なぜ彼女を殺した?」


「革命を少しでも遅らせるため・・・。」


「真実を言え。ボスを殺すためだろ。」


「そうだ。そして俺と神田勝がボスとなり、新政府を俺らでコントロールしようとしたのさ。」


「だが、ボスは最後静かに暮らすと言った。それはどっちの言葉だ。」


「俺さ。」


「なぜ?政府をコントロールできたのに。」


「もし俺がボスだとバレたら、色々まずいからな。」


「そうだな。色々と辻褄が合わなくなる。」


「それにボスがトップでやると結局独裁と変わらない。ボスはもしかすると殺されるかもしれないと思っていて念のため遺書を書いていた。その遺書で彼は『私を殺した者は次期ボスになりそして団員にボスをやめると言え』と書いていた。」


「・・・。なるほど。つまりお前は最後はボスの指示に従ってことだな。」


「そうだとも言える。別に俺は革命に反対していない、むしろ賛成派だったからな。」


「そうか、色々教えてくれてありがとう。」


「いやいい、スラムの平和の報酬だ。」


紅鬼はそう言って店から出ていった。

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パレット 池野華龍 @KaryuIkeno

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