第2話 再会

「・・・、マスター少し話を聴いてくれるか?」


「ええ、もちろん。」


「実は俺、人殺しだ。」


「・・・。」


「しかもただの人殺しではない。娘を殺した。」


「そうですか。」


「さらにその娘は俺の子ではない。どこかから拾ってきた子だ。」


「・・・。なんで殺したんですか?」


「パレットって知っているか?」


「もちろん。あの革命を起こした。」


俺がパレットの幹部だったことを伏せて話を続かせる。


「娘はな、俺に内緒でパレットに入ってんだ。しかも幹部!」


俺は耳を疑った。パレットの女性の幹部、それはもうあの人しかいない。神田舞白。俺等幹部は彼女の本名と父親を知っていた。この眼の前の男は、神田勝だ。


 その後勝は黙ってワインを飲み干すと金を置いて出ていった。俺は扉の札を返して後片付けをした。最近、神田勝の指名手配は時効を迎えたので警察に連絡する必要はない。しかし勝はどこかやつれている。


「・・・、どうすべきだ?」


すると俺のスマホが鳴った。相手は知らない電話番号だった。


「はい、もしもし。」


「もしもし。」


「こちら、バー・イエローです。」


「俺はバーに用事はない。怪盗Y、久しぶりだな。」


その名前で呼ぶ人はもういない。パレットの幹部も今はマスターと呼んでいる。


「誰ですか、あなた?」


「紅鬼だ。」


「紅鬼!?」


「そうだ。俺はあんたに頼みがある。」


「・・・、要件を。」


「単刀直入に言おう。今、裏社会が荒れている。」


「最近のニュースでヤクザの抗争が激しくなっているのは知っている。」


「ああ。それで今、スラムの人々が巻き込まれている。」


「そうか。」


今のスラムは昔のスラムとは違って、失敗した人が国の保障を受けたくないという意地を張る人が住む場所になっている。昔は保障がなかったのでスラムに住んでいる人は大体が永遠にスラムに住むことになる。


「だったらスラムの住民に生活保護を受けさせればいいんじゃないか?」


「ところがそうもいかなくてな。彼らのプライドは俺でも曲げられなかった。」


「俺でもって・・・、お前今も殺し屋やってんのか?」


「違う違う。今はもう別の仕事だ。」


「何やってんだよ?」


「自警団さ。スラムの治安維持の仕事だ。」


「ならその自警団が抗争止めればいいじゃんか。」


「いや、あいつら俺らのことガン無視するからな。そもそもヤクザは革命前からある組だからなおさら。」


「そうか。で、俺に何をしろと?」


「今回の抗争の元を盗んでほしい。」


「なんだそれは?」


「今回の抗争の元は、実は国の機密事項でね。少しでも有利に動けるようにその機密事項が書いてある書類を手に入れようと争っているわけさ。」


「なるほどな。わかった。で、その機密事項はどこにあるんだ?」


「今は亡き伝説のヤクザの組、麒麟組の事務所だ。」

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