後日談
麒麟組書類争奪抗争
第1話 後夜
幹部Sが死んでいた。ボスの部屋の前で腹部から出血をしていた。原因は大量出血。俺は慌ててボスの部屋に入るとそこには誰もいなかった。最後のボスの言葉は色々な人を政治に関わらせなさいという旨の言葉だったと幹部Iは言っていた。
「誰がSとボスを殺した?」
俺の相方―幹部Tと今は名乗っている―は下を向いて考え込んだ。
「決まってんだろ、紅鬼。それ以外ありえない。」
「だが、証拠がない。それにもしそうだったとしても動機が・・・。」
「誰か政府側ノ人間が依頼したんだろ。並の人間・・・、いや多少腕が立つ武人でもさすがに5000の護衛を突破するなんて不可能だろう。」
「まあ、そうなのだが。 」
「別に俺等は仇を取ろうなんて考えてはいないさ。そんな暇はないし。」
「それもそうだ。」
俺等が殺そうとした元警視庁長官は行方をくらませている。今は指名手配として探している。それとは別に俺等は紅鬼も探している。どちらも革命後、行方がわからないそうだ。この国は段々とスラムがなくなってきている。スラムを拠点にしていた紅鬼もすぐ見つかるだろう。しかしそれは10年経ちスラム街が99%消滅しても見つからなかった。
10年で新体制を築き、国を栄えさせたのは奇跡だと、他国は言っている。今では先進国の仲間入りを果たし積極的に発展途上国に援助を行っている。パレットに元々入っていた人は選挙に負けたり、任期が来たり、あるいは別のことがしたいだとかで政府に残っているパレットメンバーは数えられるほどになった。かくいう俺も今では町の一角でバーを営むおじさんになってしまった。別に後悔がある訳では無いが年に負けた気がしてどこか悔しい。もっと若ければスポーツアスリートになっていただろう。
在庫のドリンクを確認し、椅子や机を拭く。開店準備が整うと時計の針は開店10分前を示していた。
「少し早いけど開けるか。」
俺はバーの札をクローズからオープンにする。
「いらっしゃいませ。」
多くのお客様がバーに入ってくる。俺は注文に応じてカクテルを作る。たまにビールを頼む人もいるが・・・。
そんなある日、全身茶色のコートを羽織った人が入ってきた。ちょうどピークは過ぎ店には誰もいなかった。
「・・・、赤ワイン・・・。」
その声はひどく枯れていた。
「はい・・・。」
俺は後ろのワイングラスとこの店で1つしかない赤ワインを手にし、慣れた手付きでグラスに注ぐ。
「どうぞ。」
「・・・。」
男は一言も発さずにワイングラスを持ち上げた。
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