極めて古典的な国防省のデータセンターへの侵入方法

@HasumiChouji

極めて古典的な国防省のデータセンターへの侵入方法

「所長、調査の結果、ここ1年間、外部との不審なデータのやりとりは有りませんでした」

 その国は、軍事同盟を結んでいる大国より、仮想敵国に大量の機密データが流出している可能性が有るとの指摘を受けていた。

 そして、ようやく、国防省のデータセンターでの調査が完了したのだが……。

「外部からのサイバー攻撃も無かったのだな?」

「有る事は有りましたが、方法は極めて稚拙なもので、全て防がれています」

「ああ、そうか。では、大臣に『外部からの侵入でデータが盗まれた事実は無い』と発表してもらう事にしよう」

「ただ……」

「どうかしたのか?」

「3ヶ月前に、その端末に接続されたUSBドライブに約2TBの機密データがコピーされた記録が有りました」

 そう言って技官はデータセンター所長の机の上のPCを指差した。

「待て。俺は、このPCにそんなモノを接続した覚えも無いし、機密データをコピーした覚えも無いぞ」

「記録は有りますが……所長の御記憶にない理由は明白です。

「ちょっと待て……」

 データセンター所長は、少し考え込むと、こう言った。

「つまり、?」

「はい」

「監視カメラの記録はチェックしたか?」

「予算削減の為、2ヶ月しか保管していません」

「この施設への入退出記録は残っているだろう? それは調べたか?」

「2年前に大統領に収賄疑惑がかけられた際に、国会で『国の公的機関の入退出記録は半月分しか保持していない』という公式の答弁が有りました。3ヶ月前の入退出記録が残っていたら、それとの矛盾を野党やマスコミに追及されます」

「この御時世、野党やマスミの言う事など、誰も信じないだろ?」

「ですが、上層部に余計な手間を取らせると、私や所長の首が……」

「そうか。では、大臣に『外部からの侵入でデータが盗まれた事実は無い』と発表してもらう事にしよう」

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