第2.5話 ありえない

沼男(スワンプマン)

思考実験のひとつ。


沼の近くで雷が原因で死んだ男がいた。

しかし、沼が突然変異を起こし、死んだ男と全く同じものを生成した。

見た目はもちろん、細胞単位でおなじ。

性格も、記憶も死んだ男から引き継がれている。


しかし、死んだ記憶が無い。

雷に打たれたが奇跡的に生きている。という記憶にすり替わっているのだ。


この男は、死んだ男と同じか。


「なに、その有り得ない問題!」


親友のハルはケラケラと笑う。

有り得なくてもそういう話なんだが。


「そんなん同じじゃないでしょ!記憶ないって言ってんじゃん!」


それは、確かにそうだ。

死んだ記憶があるはずだからな。


「やめてよ、薄気味悪い問題。」



私たちは落雷によって学校に閉じ込められている。

親御さんが迎えに来るまで、ここで待っていろと。


「じゃあさ、ナツミ。確かめに行こうよ。」


突然変なことを言い出した。

確かに自分たちの学校の近くには大きな沼がある。


「だからこれは仮定の話であって…」

「いいじゃん、どーせ雷なんて落ちないよ!」


そう言って、ハルは私の腕を引いて外に連れ出した。


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学生【短編集】 @notname_

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