学生【短編集】

@notname_

第1話 夏が嫌い。

暑い。

雨が降ってるから窓は開けられない。

宿題が濡れちゃう。


暑い。

何をしててもこの言葉がまとわりつく部屋で、私はたんたんと文字を書く。

エアコンは無い。

ダラダラするからつけられないって。


暑い部屋で宿題をやってる中、弟と両親はエアコンが効いた部屋でずっと遊んでる。


なら君も、エアコンが効いた部屋まで行けばいいじゃないか、って?

そんなこと出来るはずがない。


弟のゲームの音、お父さんの動画の音、お母さんが食器を片付ける音。

その音の方が気になって、宿題なんてやってられないのだ。


だから、暑い、とても暑いこの部屋で私は机に向かうのだ。


プリントが腕に引っ付く。

プリントに汗が垂れる。

やりにくいと言ったらありゃしない。


だけど、部屋の移動をしたくなかった。


「はー!少しきゅーけー!」


息が詰まる部屋で、わざと大きな声を出して静を消した。

するとまた、ブワッと熱気が私を包み込む。


休憩がてら、ゲームをする。

ちゃんとタイマーをセットして、15分。

携帯ゲーム機を開いて、好きなゲームを少しづつ進めた。


「ちゃんと勉強してる?」


ノックもせず扉を開ける父。

その目に映るのは私がゲームをしてる所だけだ。


「してないじゃん。」

「してた!」

「でも今してない。」


あぁ、鬱陶しい。

さっきまでしていた事実をねじ曲げられて。


「やる!やるから出てってよ!」

「本当かー?」


あぁ、本当に鬱陶しい。

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