エピローグ
あれから数十日、デミトリウスは毎日のように苛烈な拷問を受けて殺してくれと泣き叫んでいるらしい。だが、ご要望の死刑執行には、あと半年はかかるそうだ。
ヴェルデからは、あの後すぐに手紙を貰った。“この度のコウスケ様の功績を公にして欲しかったら私と結婚してください😠”と拗ねたように書いてあった。“報奨金をくれて翌日に離婚して良いなら考えてやる”と返信しようと思ったが、バツ2になるのは嫌なので、思いとどまってシカトをしている。
仕事を3日くらい無断でサボり、あの事件で亡くなった被害者を弔う共同墓地に始めてきた。
まずは一緒に遊んだ子供たちの墓前に1つ、1つ花を添えていく。
「すまねえな。おめえら、今生きてたら、あの時よりもっと面白い遊びをいっぱい教えてやれたのによ。王都によ、すっげえ美人のおっぱいでけえエルフの姉ちゃんと安く3Pできるいい店があるんだよ。そことか連れてってやりたかったなあ」
次にナランハの墓にいく。
無残に破壊された墓石には、差別的な落書きが沢山描かれていた。
十数年も事件の容疑者と思われていたのだから、仕方ない事なのかも知れない。
だが、いたたまれない。悲しみで言葉を詰まらせながら必死に語り掛ける。
「わ、悪りいのは俺じゃねえぞ……。あんな馬鹿な若造に惚れた、てめえだ。それに俺は身ごもってるから無理するなって言ったじゃねえか。それ聞かねえからこんな事になんだ。今度、生まれ変わったらもっといい男を……そうだ! 今の俺なんてどうだ!? あの頃の100倍は良い男だぞ!」
「なに支離滅裂なこと言ってんのよ」
「墓石、近いうちに新しいものに作り替えられるそうだよ」
身に覚えがある声が聞こえたので振り向く。
ジャッロとマーヴィ―がいた。
「お前らどうしてここにいんだ?」
「近くで仕事があったから、もしかしたらここじゃないかと思って寄ったんだ」
「私は、あの子達に居場所を聞かれてね。もしかしたらここじゃないかと思って連れてきたの」
「「パパ―!」」
スカーレットとヴィオレが、遠くからこちらに駆けて来ている。
「それより良かったの? あの子達から例の記憶を消しちゃって」
「……お前らも知ってるだろうけど、俺はただ喧嘩が人よりちょっと強いだけの世間を知らねえガキだったじゃねえか。それが周りに煽てられて、世の中をよくできる力があるとか勘違いしてこんなに多くの人を死なせちまったんだ。あいつらがあの頃の俺を知ったら教育に悪りい」
「相棒、それは違うと――」
「あいつらは子供の教育にいい今の俺を見本にしなきゃいけねえ」
「今のコウスケのどこが子供の教育に良いのよ」
「ガキ共が俺の前に現れなきゃお前らと、こうしてまた会う事は一生無かったろうな。あいつらには本当に感謝している。だから俺はあいつらを世の中の酸いも甘いも知る、今の俺の様な素晴らしい人間に育て上げるつもりよ」
ニヤリと笑うコウスケを見ながら、ジャッロとマーヴィ―は目を合わせて苦笑いした。
そうこうしているうちにスカーレットとヴィオレが追い付いてきた。
「ねえ、ここは誰のお墓なの?」
「あ? 俺の元女房の墓だ」
「えーーー! パパ結婚してたの?」
「うわあ! この人もの好き。でもどうして……」
「聞いてくれるか……」
神妙な顔をしたコウスケに、スカーレットとヴィオレは息をのむ。
「俺が沢山の女を家に呼んで乱交パーティーしてる時に帰ってきちまってな。それで怒って家を出ていった直後に馬糞を踏んで滑って転んだんだ。その時に頭の打ちどころが悪くて……」
「うわー、最低最悪」
「それでパパに恨みを持つ多くの人たちによって、こんなにお墓をボロボロにされたのね」
「なんだと! こいつも一緒に乱交パーティー加わってりゃ、こんな事にはなんなかったんだよ!」
コウスケは目に涙を滲ませながら、非難の声をあげる2人を怒鳴り散らしたのだった。
調子に乗ってざまあされたゲス勇者、娘たちに逆襲されるの巻 松本生花店 @matsumotoseikaten
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