5-11

 衛兵隊は、自警団が目立つことは良い事でも悪い事でも嫌う。

 どんな犯罪者を捕まえても報奨金はキッチリとくれるが、大きな犯罪者を捕まえた功績は全て自分たちの手柄だと王政府に報告して、社会に宣伝する。

 なので、コウスケがどんな大物犯罪者を捕まえてもヴェルデの耳にそれが入ることがなかった。

 いや過去に現場で近衛兵とバッティングしたことはあるし、衛兵隊に近衛兵を忍び込ませていなかったとも思えない。恐らく女王をゲス勇者に近づけたくない現場の近衛兵達が、報告を握りつぶしてくれていたのだろう。


「ですが今回、近衛兵が煌剣団とトラブルを起こしてくれたおかげでジャッロさんから直接、私の元に連絡が入ってきたのです♡ このチャンスを活かさない手はありません♡」


(あの野郎……どうして俺の事を言うんだ)


 この女のヤバいストーカー行為には何度も苦しめられた。ナランハと早々に結婚した理由の1つもそれから逃げるためだ。

 ヴェルデと結婚する位なら、この先永劫ゲス勇者と馬鹿にされ続けた方がマシである。


「ヴェルデ……」

「王室の経費は賭博に好きなだけご利用くださいませ。コウスケ様の為に私はボロを着て、食べることも我慢致します」

「いや」

「私と結婚すればコウスケ様は王族です。これからは、娼館などいかずに側室を好きなだけご用意くださいませ。私も歳をとり、やっと殿方のその様な心理を許容できるようになりました」

「俺は子持――」

「はい。私は母の勤めもしっかりこなしますので、ご安心くださいませ♡」


 ヴェルデは勝ち誇ったかの様な顔でコウスケを見ている。

 いったいなにに勝利したつもりでいるのかイマイチ分からないが、会話を続けることにした。


「ところでお前、彼氏いた事あんのか?」

「なにを申されます! 私はずっとコウスケ様一筋です!」

「お前30後半じゃねえか。この歳で処女の女は重たいから嫌だなあ。強制的に結婚しても起たねえから抱けねえな」

「そ、そんな……以前は処女が良いと申していたではありませんか……」

(バーカ。てめえと結婚したくねえからコロコロ変えてんだよ)


 動揺している。突くならばここだろう。


「何年前の話ししてんだ。てめえみたいな経験不足な重い女とはやれねえな」

「お、お待ちください! 確かに最後の経験はございませんが、それまでの経験ならば多少は……」

「どうせ俺のホムンクルスでも軍事用とか言って作らせて励んだとか、そんなだろ」

「ど、どうして、その事をご存じなのですか?」

(うわー適当に言ったらマジかよ。ヤベえなこの女)

「とにかく、高齢処女は重いから抱けねえ。じゃあな!」

「そんな……しかし、本物のコウスケ様以外とその様なことをするのは……ああーーー!」


 突然発狂しだしたヴェルデに、近衛兵は呆然としている。

 下品なことを口走るヴェルデを見るのも始めてなのだろう。



「安心しろ。寝て起きたらこの女ケロッとしてるよ」


 近衛兵にそう語り掛けあと、スカーレットとヴィオレを抱え、この場を後にした。



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