第48話 余命わずかな令嬢は誰よりも幸せになりました
「ユリア、準備は出来ているかい?」
「ええ、ばっちりですわ」
魔術師様たちが開発した薬を飲み始めてから早半年。すっかり魔力も回復し、完全に元の体に戻った。公爵家の養女になった私は、お義父様やお義母様、もちろんブラック様からもたっぷりの愛情を受け、毎日楽しい生活を送っている。
お義姉様や王妃様、ライズ殿下やクリミア殿下とも交流を深めている。ただ、なぜかブラック様は私とライズ殿下を会わせたがらず、ライズ殿下が私の方に来るのを拒んでいるが…
学院の方も、すっかりクラスに溶け込むことが出来た。新しく出来た友人達はもちろん、昔からの友人達とも楽しく過ごしている。
そして今日は、ブラック様と私の婚約披露パーティーだ。私の為にとても高価なドレスやアクセサリーを準備してくれたお義母様。そんな素敵なドレスに身を包み、ブラック様の元へと向かう。
「ユリア、本当に綺麗だよ。あれ?そのブローチは、もしかして」
「はい、ブラック様と初めて会ったあの日、ブラック様が探してくださった母の形見のブローチですわ。今日という素晴らしい日に、どうしても付けたくて」
私の胸には、ブラック様と出会わせてくれたブローチが光っている。今思うと、もしかしたらお母様がブラック様に引き合わせて下さったのかも、なんて考えているのだ。
「よく似合っているよ。さあ、行こうか」
「はい」
ブラック様と一緒に、今日の会場でもある公爵家の中庭へと向かう。ふと空を見上げると、雲一つない綺麗な青空が広がっていた。なんだか空の上から、両親や天使様が見守っていてくれている様な、そんな気がするのはなぜだろう。
「ユリア、空を見上げてどうしたんだい?それにしてもいい天気だね。もしかしたら君のご両親が空から見ているかもしれない。ご両親に安心してもらえる様に、君の幸せな姿をしっかり見てもらわないといけないね」
そう言って笑ったブラック様。私がお父様からの伝言を伝えた後、すぐにお墓に連れて行ってくれたブラック様。どうやら事前に掃除をしてくれていた様で、綺麗に整備されていた。その後も月命日には必ず2人でお墓参りに行っている。ブラック様は、亡くなった私の両親も大切にしてくれるのだ。
「ブラック様、私と婚約してくださり、ありがとうございます」
「俺の方こそ、傍にいてくれてありがとう。この世界に戻って来てくれてありがとう。どれくらいお礼を言えばいいか分からないくらい、君には感謝しているよ」
どれくらいお礼を言えばいいか分からない、それは私のセリフだ。
「さあ、皆が待っているよ。行こうか」
ブラック様と一緒に会場へと向かう。既にたくさんの貴族たちが集まってくれていた。もちろん、お義姉様たち王族たちも。
「ユリアお姉様、ブラックお兄様、婚約おめでとうございます」
「ユリア…とても綺麗だよ。本当に婚約をしてしまうのかい?」
こちらにやって来たのは、ライズ殿下とクリミア殿下だ。クリミア殿下は嬉しそうに可愛らしい花束を持ってきてくれた。ただ…なぜかライズ殿下は悲しそうだ。それになんだか訳の分からない事を言っているし…
「ライズ殿下、クリミア殿下、今日はありがとうございます。こんな綺麗なお花を持ってきてくださって、とても嬉しいですわ」
ライズ殿下とクリミア殿下をギュッと抱きしめた。本当に可愛い子たちね。
「ライズ殿下、いい加減ユリアの事は諦めて下さい。あなたはまた5歳、ユリアとは11歳も離れているのですよ。本当にもう…」
「僕は歳の差なんて気にしないよ!ユリア、すぐに大人になるから待っていてね」
なぜか目を輝かせて訴えてくるライズ殿下。本当に可愛い。
大体の貴族が集まったところで、私たちの婚約披露パーティーが始まった。ふと周りを見渡す。すると、昔からの友人たちはもちろん、新しく出来た友人たちも沢山来てくれていた。
「ユリア、婚約おめでとう。今まで辛い思いをした分、必ず幸せになるのよ」
そう言って友人たちが祝福してくれるのだ。ほんの1年ほど前までは、余命わずかだった私。家族から厄介者扱いされ、それでも必死に生きていた。
でも今は…
こんなに沢山の人たちが私の幸せを願ってくれている。沢山の人たちが、私の為に動いてくれた。
そして何より、誰よりも大切なブラック様、彼が隣で私を支えてくれる。
「ブラック様、私、とても幸せです。こんなにも沢山の幸せを与えて下さり、ありがとうございます」
隣にいたブラック様に、笑顔でほほ笑んだ。すると
「俺はその笑顔が大好きなんだ。ユリア、俺も今幸せでたまらない。これからはもっともっと幸せな事が待っているよ」
もっともっと、幸せな事か…
お父様、お母様、天使様、私の姿、見ていますか?
私は今、胸を張って言えます。この世界で一番幸せな女性になったと。あの時、私の選択を、この世界に戻る私を笑顔で送り出してくださり、ありがとうございます。
空を見上げながら、心の中で呟いた。
「ユリア、空を見上げてどうしたんだい?」
「何でもありませんわ。まだまだ沢山の人たちに挨拶に回らないといけませんね。ブラック様、参りましょう」
ブラック様の温かい手をギュッと握った。
私を地獄から救い出し、生きる本当の喜び、沢山の人に愛される満たされた日々を与えて下さったブラック様。これからもお母様から教えてもらった笑顔を絶やさず、生きていきたい。
彼と共に…
おしまい
~あとがき~
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました @karamimi
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