⑧ お腹の中の検査 初めてのバリウム編

バリウムっつったらあれですよ、うんこが白くなるやつです。

ごめんなさい、いきなりこんな話で。でも本当なんだ。


というか僕は親からそう教えられて生きてきました。バリウムを飲むと白いうんちが出るんだよ、って。幼稚園児くらいのときから。「うんちが白くなるわけねえだろ」って僕は笑っていました。理科の授業でバリウムって単語が出てきたときも「あーはいはいうんちが白くなるやつね笑」みたいなノリでした。


でもうちの親が人間ドックでやっていたのは胃バリウムです。今回僕がやるのは小腸バリウム。

この時点でのバリウム検査の僕の知識は「検査後に白い便が出る」「しゅわしゅわした液体も飲まされてゲップすると死ぬ(やり直し)」といったものでした。ゲップするなって。いったいどんなものを飲まされるんだ? 何もわからない。


小腸バリウムはバリウムを飲むので特に食事制限はなかったと思うんですが、前日の夜以降は食事を抜いたのと、あと検査までは水分を摂るなっていう縛りがついてました。水分を摂らないのはバリウムが薄まるかららしいです。


土曜日に大腸カメラをやって、日曜日を挟んで小腸バリウムは月曜日。胃カメラ、大腸カメラをクリアした自分は、小腸バリウムに対して一切の緊張を抱いていませんでした。だってうんちが白くなるだけの検査だぜ? そんなの楽勝だろ。

マジでヘラヘラしてました。そして大抵のエンタメではそうやってヘラヘラしてるやつが痛い目をみるんですよね。みなさん予想がついていると思いますが、実際そうなりました。


検査着に着替えて、検査室へ。検査室にはなんかものすごい機械が置いてあって、その機械にはベッドがついています。ベッドが立っていました。


縦!? ベッドが縦!?


じゃあそこに立ってください、と立ち上がっているベッドに背をつけさせられました。

そして目の前にはアメリカのマックのLサイズドリンクのようなとにかくでかいカップが備え付けられていました。アメリカサイズのカップには白い液体がなみなみと注がれていました。


検査技師の先生は準備を終えると、そのアメリカサイズのカップを示して「じゃあ飲んでください」と言いました。

「イッキですか!?」

当たり前のようにそう質問する僕。笑う検査技師の先生。

「ゆっくり少しずつでいいですよ」

……これはフリか?

完全に飲み会大学生の脳をしていました。

美味しくはないんだったら、一気に飲むほうがいいんじゃないか? 頭の悪い僕はそう考えました。そしてカップを手に取り、ぐいっとバリウムを煽りました。

一口飲んだ瞬間に広がるなんとも言えない味……あれ、意外といけるな? 味わったことはないけど、なんていうか……

はい、二口目でオエッてなりました。検査技師から「ゆっくりでいいですよ」と再度念を押されました。

「これってゲップしたらやり直しですか?」

そう質問すると、検査技師は首を傾げてきました。

「親がゲップしたらダメだって言ってたから……」

「それは胃の検査のときですね。バリウム飲むだけなら別に大丈夫ですよ」

そういうことらしい。

そもそもバリウムがアメリカサイズなのは、小腸全体にバリウムを行き渡らせるためらしく。数メートルある小腸をバリウムまみれにするにはそれくらいの量が必要だと。僕はえずきながらバリウムを飲み終えました。とりあえず地獄は終了したな。もうあとはパシャパシャ身体の中の写真を撮られるだけだろ。楽勝楽勝。


「どれくらいで検査終わるんですか?」

「バリウムが行き渡ったりするのを待たなきゃいけないんで、まあ1時間くらいですかね」

いち、いちじかん?

出ていく検査技師。マイクで「ベッドにつかまってください」という検査技師。つかまる僕。動くベッド。僕は横たわった。

この状態でやれることと言えば、時計とにらめっこすることだけ。え、つら。鎮静剤、鎮静剤は? なんで寝かせてくれないの?

とはいえ、ただベッドに横たわっていたわけではありません。検査技師の言われるままに右に回ったり、左に回ったり。バリウムを広げる動きを硬いベッドの上でさせられます。

どれくらいの時間が経ったでしょうか。待ってる間もたぶん撮影はされています。

これはもはや拷問でした。そして拷問はさらに厳しいものに。

「ちょっとお腹押さえますね」

検査技師の言葉とともに、突然動き出すベッドの上のなんか変な棒。マジで変な棒。それが降りてきて、ぐいぐいとものすごい力でお腹を押さえつける始めました。

これが痛いのなんの。ほんとに痛い。人間の手じゃなくて機械の力で押さえつけてるから抵抗などできるはずもなく……。

押さえつけられちゃあ動きが止まり、押さえつけられちゃあまた動きが止まり。え、これなんで鎮静剤ないの? 鎮静剤早く打ってくれない?


ちなみに鎮静剤を打たないのはバリウムを全体に広げるために動き回るためなんですけどね。ちなみにこれ、ここから8年後に起きる悲劇の伏線です。僕がそこまで更新するまで覚えておいてください。


さて、小腸バリウムも仕上げ。

「じゃあ発泡剤を飲んでください。ゲップは我慢してくださいね」

いや結局ゲップしちゃいけないんかーい!

漫才の伏線回収のような展開。そしてこのゲップ我慢がもうほんとにつらかったです。しかも胃じゃないから胃バリウムより長時間ゲップを我慢しなきゃいけない。

ゲップを我慢したら、ようやく地獄の終わり。


結局撮影されてるのかされてないのかよくわからないまま小腸バリウムが終わりました。僕に残ったのはただただきついという意識付けだけ。


胃カメラから始まった長い長い戦いの終わり。


一番きつかったのは何かって?

そりゃ決まってるでしょ。小腸バリウムですよ。

はい、これ伏線ですからね。覚えといてくださいね。

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僕はカレーが食べたい 江戸川雷兎 @lightningrabbit

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