小指

とろり。

小指


 仕事の帰り道。アパートへの道を一人で歩く。


「あの……」


 声を掛けられたような気がして振り向く。が、そこには誰もいなかった。


 翌日も仕事の帰り道で声を掛けられたような気がして振り向くが、誰もいなかった。

 女性の、淋しげな、か細い声が耳に残る。


 そんな不可解な事が四日間続くけれど、その後、ピタッと止まった。


 しかし


 寝苦しい夏の夜の午前零時。アパートの玄関をならす音。


「こんな時間に誰だよ……」


 ぶつぶつ言いながら、ドアを開ける。誰もいないようだ。が


ユビキリ、、、

 ユビキリ、、、

  ユビキリ、、、エイエンノヤクソク、、、


 女性の、淋しげな、か細い声が聞こえる。


 そして


 地面に落ちる生々しい誰かの小指――



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小指 とろり。 @towanosakura

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