ただ意味もなく漂いたい

@komiyaouka

第1話『裂傷』

僕は施設育ちである、八年前のある日小さな諍いをきっかけに父が母のことを殺した、父と母共に両親とは絶縁関係だったため、身寄りもなく施設に預けられた


施設に入ると噂の早い連中が僕のことを、「人殺しの息子」や「お前もいつか人を殺すんだろ!」とはやし立てていた、

施設でも居場所がないのだろうと思っていたその時、ある一人の女の子に助けられた。


名前は『鈴谷芽衣』彼女は幼いころ、強盗に家を襲われ、両親を亡くし一人になったため施設に入ったらしい

犯人はいまだ捕まっておらず、いつか自分の手で犯人を捕まえるのだとよく言っていた。


僕はそんな彼女と過ごす時間が好きだった。

だがしかし自分にとっての平穏というのは、あっけなく終わってしまった。

二年前の冬、いつも通り芽衣と一緒にいた、施設での冬はあまりに寒く、暖炉の前で一緒に温まりながら他愛もない話を続けていた。すると突然施設内の教会の方から叫び声が聞こえた何事かと二人で教会に向かうとそこには、言葉では形容できないような凄惨な光景が広がっていた。

僕たちが啞然と、ただ立ち尽くしていると白く、気持ちの悪い笑顔を浮かべていた仮面の人間が包丁を持ってこちらに勢い良く向かってきた。

自分の方に殺意の矛先が向いていることがわかっていても体が寸分も動かない、とうとう目の前に気持ちの悪い仮面が現れた時、目の前が赤黒く、赤黒く染まった、すぐにこれが血であることがわかった、だがしかし自分自身に痛みは感じられない、ふと気配を感じ下を見るとそこには腹部から大量の血を流している芽衣の姿があった、すぐ隣にいたはずの生温かいはずの体温がどんどん失われていく、はっきりと人の死を感じ取った、僕は声を上げて泣き喚いた。

その声は泣いているとは思えない、絶叫ともとれるほど悲痛なものだった。


彼女の徐々に冷えていく体温を感じながら彼女の口が微かに動いているのが見えた。気づけばあの仮面の男は逃げていて彼女はもう呼吸をしていなかった、それ以降のことはもう覚えていない、そんなことがあってからはや二年、今日は芽衣の二回忌の日である


彼女が死んでから僕は心を固く閉ざし、人と

の関わり断ってきた

周りの人間に不信感を抱きつつも今は亡き彼女に白ユリを手向ける。

一通り済んだ後帰ろうとすると一人の男が話しかけてきた


「君がこの子の最期の時、に一緒にいた『間宮蒼』君で間違えないかな?」

「誰ですか…?」

「…申し遅れた、私はこの事件でここに配属された、山岸祥太郎、刑事だ」

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