見えない王座

schwarz

第1話 発表

 張り詰めた空気の中、1人笑顔な面接官が順番に指名していく。


「では次、3番の方、自己紹介をお願いします。」


ついに自分の番。今度こそ。


「はい、オスカー・ミュラーです。アルカニアアカデミー付属校出身。

好きなことわざは「”お”穴に入らずんば虎子を得ず」です!」―――




――ああぁぁぁぁぁ


「絶対落ちたぁ」頭を抱える俺に2人は楽しそうに


「え、何社目だっけ?」「そろ100」


そんなでもねぇよ。就活を始めてから落ちた企業は数しれず、もう無理起業しよ。


「でもまぁ気ぃ落とすな、誰だってそんなもんだよ頑張れ」


おいおいこいつ良い奴だなぁ。こんないい友達を持って俺は…いや待て。


「お前は違うだろ、親社長だっただろ」


「それはそう」と、この憎たらしい奴は答えるのだ。


そう、俺の親友ルカ・ベルトーニの親はベルトーニ・エンタープライズという大手企

業の社長である。ベルトーニ・エンタープライズは外国にも多くの子会社や工場を持つ多国籍企業で業績も右肩上り。つまりルカは就職なんぞする必要もなく将来はここの社長というわけである。全く高みの見物ってやつか。こんな会社なにがあっても絶対受けてやんないぞ。


「カイ、カイは俺だけ置いていったりしないよな」


「いや先輩のベンチャー企業から話が来てる」


なんだと、、、いや悔しいがこれは仕方がない。カイル・マーシャル、うちの学校では言わずと知れた天才だった。


「はぁ、もうみんな就職決まってるのに、いつになったら合格できるんだよ俺は!」

勢いのまま1000円したコーヒーを飲み干してやった。


「でもまだ不合格って決まったわけじゃないんだろ?今日発表だっけ?」


そう、今日は何回目かもう忘れたが合否発表の日だ、だがなぁ…

「いやそうだけどさ、見る意味ないってどうせ落ちてるって」


「まぁ見てみないとわからんだろ。ほらIDとパス入れな」


そう言ってルカは自分のスマホを俺に手渡した。


俺は合否発表のホームページにIDとパス入れて、


「あぁ、見るぞ…」

「おう」とルカは隣に来てスマホを覗き込んで興味なさげだったカイも顔をこっちに

向けた。


俺は画面にゆっくりそっと触れた。

三人が画面を覗き込む。時間が流れる。



はぁ…やれやれ。

オスカー・ミュラーはまたしても就職に失敗した。

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