宇宙からの手紙
ヒノワ馨
宇宙からの手紙
貴方たちの星から、今までいくつも手紙が送られてきました。
お返事が遅くなりましたこと、まずは謝罪いたします。
私たち以外に、この宇宙に知的生命体がいることに私たちは大変驚きました。
手紙に書いていただいていたこと、大変興味深く拝読いたしました。
私たちの星からは、太陽が2つ、月が3つ見えます。
貴方たちの住む星系とは遠く離れていることでしょう。
貴方たちの手紙を最初に受け取ったのは、私から10世代以上前になります。
貴方たちの星ではどれくらいの年月になるでしょうか。
解読にとても時間がかかりました。
私たち生命体は、あなたたちのように視覚、聴覚、触覚、嗅覚があります。
しかし味覚というものはありません。
私たちは生命活動の為に他の生物を必要としないのです。
貴方たちでいう「呼吸」。
私たちはこの行為で、私たちの全ての生命活動に必要なエネルギーを賄っています。
貴方たちの生命活動に必要なガスは、O2でしたね。
私たちに必要なのはCH4のガスです。
このガスに代わるものは、この星にはありません。
貴方たちの星では、他の生命との共存がうまくできているようですね。
多種多様な生物が溢れて、「水」という美しい物質で満たされている。
美しい星のようです。
私たちの星は到底美しいとは言えません。
争いが絶えない、無機質な星です。
先述したように、私たちの生命活動に必要なのはその1つのガスです。
ある時、そのガスが生まれる量と、私たちが消費する量のバランスが崩れました。
その時から、私たちはガスを求め互いに殺しあうようになりました。
貴方たちのような豊かな星だと、きっとこんなことは起こらないのでしょう。
同じ生物同士で殺しあうなど、こんなに愚かなことはありません。
技術が進んで、他の星の生物とコンタクトができるようになっても、私たちの星に幸せはありませんでした。
もし私たちが貴方たちの星に行くことができれば、私たちは共存することもできたかもしれません。
でも、それももう手遅れです。
私はこの星の最後の一人です。
もっと早く手紙を解読できていれば、もっと早く手紙が届いていれば、この星の争いもなかったかもしれません。
この手紙が貴方たちの元へ届く頃には、この星はどうなっているんでしょうか。
私には知る由もありません。
残念です。
宇宙の隣人よ。
さようなら。
宇宙からの手紙 ヒノワ馨 @hiro_n04
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます