TS転生で男になったのでBLを楽しもうと思ったのに、くっころ女騎士に惚れられてしまいました。

ありま氷炎

🌹

 イケメン、イケメンにちやほやされたい。

 でも女の身では嫌。

 美少年になって、ちやほやされたい。


 願いはかなったけど、いや、なんでかなあ。


「キロン。持ってきてやったぞ」


 金髪に青い瞳。

 少しつり目で可愛い系の女の子は鎧に身をかため、私にあるものを差し出す。


「え?大きくない?」

「大は小をかねるだろう?」


 ふっと偉そうに女騎士マルガリータは胸を逸らす。

 鎧に覆われているが、その胸は結構大きい。

 なんていうか、少年誌でよく出てくる女騎士そのもの。

 気の強そうな美少女で、胸がでかい。

 だから、狙われたんだろうな。

 あいつらに。


 森でオークに襲われて、鎧をひん剥かれて、その豊満な胸がぽろろーんと出そうになっていたところに、私は出くわした。

 マルガリータはぐっと歯を食いしばり、まさに「くっ、殺せ」と言いそうな感じだった。

 無視するなんてできるわけがない。

 魔法を使える私は、オークたちに眠りの魔法をかけ、マルガリータを助けた。

 その日から、彼女は私につきまとうようになってしまった。


 助けてもらった人に懐く。

 気持ちはわかる。

 だけど、私の目的には邪魔だ。

 体は男だけど、心は女なのだ。

 男の身、しかも将来有望な子に転生したと知った私は赤子の身で喜んだ。

 将来有望?

 それは両親の容姿を見て、確信した。

 美しい両親の間に生まれた「私」、美しく成長するに決まっているだろう。

 私の予想通り、美しく成長していった「私」は魔力が高かったので、魔法学園にはいることになった。全寮制だ。私は喜んだ。

 全寮制、男女分かれたその空間。

 そこで繰り広げられる愛憎劇。

 寮長に襲われる寮生。慰めあう男子生徒、そして優しい先輩。

 美少年の私、ハーレムを作ってやろうと思った。

 もちろん、男のハーレムだ。

 男に生まれたけど、興味があるのは男。

 あと、女子力はない。

 前世は、腐女子だった。オタク系の腐女子。おしゃれなど、まったく興味がない。暇があればBL小説、漫画を読み、普通のアニメや小説を読んでは妄想を掻き立てられ、BL2次を書いてた。

 男x男のカップリングを妄想、その世界に浸っていた。

 だから、突然事故に巻き込まれて、死にそうになった瞬間。

 私は願ってしまった。

 もし生まれ変わったら、男になってBL無双したいと。

 意識が途切れ、再び目が覚めた時、私は自分を覗き込む大きな二つの顔に驚いた。キラキラな金髪の髪に、透明すぎる青い瞳。

 怖くなって泣いてしまった。

 そして、私は気がついた。

 あ、自分は赤子だ。そして生まれ変わったのだと。


「キロン。大きいのはやっぱりだめか?」

「ううん。大丈夫。ありがとう。マルガリータ」


 マルガリータに頼んだのは、鍋だった。

 小さい鍋でよかったんだけど、めちゃくちゃ大きい鍋をもってきてくれた。

 重いだろうに。さすが騎士だと思う。


 大きい鍋で二人分のスープ。焦げそう。うん。

 大きい鍋で少量は作れるけど、なんだかあれだね。


「うまいな」

「よかった」


 マルガリータは、美味しそうにスープを飲んでくれる。

 可愛い。

 うん。可愛い。

 だけど、私は、私の夢は男のハーレム。

 マルガリータが可愛くても、ダメなものはだめ。


「キロン。やっぱり帰るのか?」

「うん。学校始まるし」

「そうか、そうだな」


 うちの両親は美男美女で、一応貴族であったけど、貧乏だった。

 学園の入学費や寮費は奨学金で賄える。

 だけど、その他の費用は自分で稼ぐ必要があった。だから、森に入っては薬草を採取販売、魔物を倒して解体してその肉や毛皮を売ろうと決めた。

 マルガリータをたまたま助けた時も、生活費を稼ぐために森に入った時だった。

 


 ☆


 マルガリータとはその後森で別れた。

 なんだかあっさりしていたけど。

 まあ、ちょっとだけ寂しいけど、私の目的はハーレムを作ることだ!

 私の野望はあっさり叶えられた。

 私が美少年すぎるためか、共学なのに、釣れる、釣れる。

 寮長に、先輩にルームメイト、クラスメート。

 釣り放題だった。

 ちやほやされて、嬉しいと思った。

 そんで二人っきりになった隙を狙われて、キス。

 なんていうか、二次で見ていたのと違う。気持ち悪い。口に舌が入ってきて。私は逃げ出した。


 全然綺麗じゃない。気持ち悪い。吐きそう。

 え?キスがあれなら、それ以上は。っていうか男同士はお尻の穴だよね。

 うんこ出すところへ?そんな痛みに耐えられるの?

 読んでいた時は全然感じなかったのに、急に怖くなった。

 ハーレムを作ったことを深く後悔した。


 だけど、なんていうか、自業自得。

 男の狩猟本能なのか、なんなのか、ハーレム要員たちが急に積極的になった。気がついたら二人っきりになりそうになってるし、キスも。私は逃げまくった。

 ルームメイトも危ないので、寮にも帰れず、森で寝泊まりをすることになってしまった。


 森でマルガリータを見かけた時は、本当ほっとした。

 何かあったのかと聞かれたけど、自分で作ったハーレムのその要員に襲われているなんて、恥ずかしくて言えなくて、とりあえず、なんでもないと答えた。

 マルガリータは、森で夜を明かす私に付き合ってくれて、なぜか、作った天幕で一緒に寝ることに。

 鎧を外して、ぽよよーんなマルガリータにはドキドキしたけど、何もなかった。

 彼女に誘われたら危なかったと思う。

 心は女、だけど体は男だかんなあ。

 うーん。


 翌朝、彼女と一緒に朝ご飯を食べてから学校に行く。

 学校では、できるだけ一人にならないようにしている。

 こうなると味方は女の子だ。

 なぜか生暖かい目で見られたけど、一緒にいてくれた。

 女の子は可愛い。だけどマルガリータはもっと可愛い。

 さすが、くっころ女騎士。

 制服とか似合いそうだけど、胸がパッツンパッツンだろうなあ。

 そんな妄想をしていると、いつの間にか一人。

 

「え?」


 恐怖心が全身を包む。

 何やら、視線も感じるし。

 ぎゃー、逃げろ。


 私はとりあえず人が多い、食堂を目指すことにした。

 だけど、無情にもその途中で確保されてしまう。

 部屋に連れ込まれたと思ったら、そこには勢揃いのハーレム要員。


「もう一人ずつじゃ、埒あかないから。共有することにしたんだ。キロン君」

「先輩、どうして部屋に戻ってこないんです。二人っきりで楽しみたかったのに」


 怖いよ。

 いや、これって、総受け状態。

 だけど、求めてない。

 いや、前はすごいとか思って喜んでいたけど、実際自分の身に降りかかってくると違う。


「安心してよ。楽しませてあげるから」


 安心なんかできるか。

 いやメス堕ち?

 こういう展開知ってるけど、嫌だ!


「お前ら、キロンをどうするつもりだ!」


 扉がばんと壊されて、そこに現れたのはマルガリータだった。


「女騎士?!なんで学園に」

「所詮。女だ。混ぜるか?」

「マルガリータ。逃げて!私は自業自得だから。ああ、できれば先生でも呼んでくれれば」


 これって、先生は黙認しているんだろうな。

 逃走していた時も人影なかったし。

 まあ、ハーレム要員、結構いい身分の方ばっかりだったし。

 ああ、なんていうか馬鹿すぎる。私。


「キロン。私がお前を捨てて逃げるわけがないだろう!オークよりも弱いやつに負けるわけがない!」


 オーク。ああ、そうだった。

 最初オークに襲われていたね。だけど先輩たちはオークより強いと思うよ。

 あ、でも杖を持っていなければ。

 私もだけど、魔法を使うための杖は携帯しているわけじゃない。 

 先輩たちもそうだったみたいで、マルガリータの圧勝だった。

 うん。だてに騎士じゃないね。


「覚えてろよ。こんなことをして」

「私はマルガリータ・セレグレナだ。いつでも迎え撃つぞ」

「セレグレナ。宰相閣下の、」

「ああ、そうだ。父は宰相だ」


 先輩たちは怪我をしていたはずなのに、一目散に逃げ出してしまった。

 まあ、襲われそうになったところの反撃だから、正当防衛だもんな。

 こっちに理がある。

 しかもマルガリータのお父さんが宰相閣下なんて。

 いいところのお嬢様が騎士なんてやっていいのか?いや、いいところだからあり得るのか?


「キロン。大丈夫だったか?」

「ありがとう。助かった。あのままだった、総受け、メス堕ちだった」

「まあ、それが夢だったんじゃないか?」

「マルガリータ?」

「キロンが好きでやっているなら、まあ、いいかなと思ったけど、最近寮にも帰らなくなったし、心配になったんだ。様子見にきてよかった。キロン。私の前世は流行太一(ながれ たいち)。キロンは不由子だろう?」

「え?太一にいちゃん?!」

「そう。ふふふ。驚いた?」

「うん。っていうか、なんていうか」

「お互い様だろう?」


 太一にいこと、マルガリータはおっきな胸を逸らして笑う。

 流行太一(ながれ たいち)は私の従兄弟だ。隣に住んでた二つ上の従兄弟。

 そういえば、なんていうか、前世の太一にいちゃんはちょっと変わっていた。いや、年頃なら変ではないのかな??

 オークに襲われている女騎士の漫画見て、興奮してたっけ。

 

「もしかして太一にいちゃんは、オークに凌辱されたかったの?だから、マルガリータに転生?!」


 うーん。なんていうか引くわあ。


「ちっ、ちっ、勘違いしたらだめだぞ。私はオークに襲われる女騎士になりたかったんだ。オークに襲われたいたけじゃない」

「え?でも結局やることは一緒じゃ」

「違うんだな。これが。ほら、このプリンプリン感。私はこれを楽しみたかった。走るともう揺れる揺れる。たっぷたっぷ。幸せ」


 ……変態。

 自分の胸だよ。それ。


「だけど、実際襲われると違うよな。マジで怖かった。とてもじゃないけど、犯されるくらいなら、殺せって気持ちが本当にわかったよ。あの時は助けてくれてありがとう。キロン」

「うん」

 

 うう。マルガリータが太一にいちゃん?

 ちょっと理解が追いつかない。

 だって、あの太一にいが……。

 あれ、よく見たら、ちょっと似てる?

 太一にいってよく見たら綺麗な顔してたもんな。


「それより。キロンはまだ続けるのか?」

「う、いや、もういいかなって。二次元で、間接的に見ている時は、楽しそうとか思ったけど、実際、なんていうか、襲われてみると怖い」

「だろう?怖いよな?」

「うん」


 なんていうか、いちゃいちゃしているのとか、ベロチューとか、ちょっとドキドキして読んでたけど、実際、気持ち悪い。無理だった。


「……だったら、私がしたらどう?」


 マルガリータはいきなり、私の後ろの壁に両手をついて、壁ドンをした。


「怖い?」

「怖くない。でもドキドキするかも」

「ふふ。だったら、これは?」


 マルガリータの顔を近づいてきて、ますます胸がドキドキする。

 自然と目を閉じてしまって、唇を吸われる。


「どう、気持ち悪い?」

「ううん。変な感じ」

「そう。変な感じか。まだまだだな。いいや、ゆっくり行こう。まだまだ少年だし」

「マルガリータ?」

「キロン。これからもよろしく。もうハーレム作りはやめたほうがいいよ」

「うん。そうする」

「まあ、作ろうとしても私が壊すけどね」

「え?」

「なんでもないよ。さあ、森に行こう。オークをやってやる!」

「マルガリータ。まだ諦めてないの?」

「違うよ。キロン。オーク狩りをして、お金を稼ごうって意味」

「そう、そういうこと。じゃ、行こう」


 マルガリータの前世が太一にいちゃんだたんて、びっくりしたけど、とりあえず嬉しい。色々聞きたいことあるけど、まあ、それは後にしよう。


(おしまい)




 




 

 

 

 

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TS転生で男になったのでBLを楽しもうと思ったのに、くっころ女騎士に惚れられてしまいました。 ありま氷炎 @arimahien

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