【和風F】【中華F】ブックロード”という視点『奈良・平安期の日中文化交流』から
日中比較文化論の張競さんの書かれたものを探していて、『奈良・平安期の日中文化交流』というタイトルの本を見つけました。
日本の平安時代をモチーフとした小説や、唐をモチーフにした小説を書く鷲生にはうってつけの資料本だと思って、急いで図書館で借りてきましたが……。
分厚いのでそのまま手元で積読本になりかかってましたw
昨夜、ふと思い立ってページを開いてみた次第です。
※鷲生の平安ファンタジーと中華ファンタジーは以下の2作です。
「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393)
「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」
https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815
その『奈良・平安期の日中文化交流』では「ブックロード」という視点が提示されています。
中国と西方との交易は「シルクロード」と呼ばれますが、中国と朝鮮半島や日本などの東アジアとの交流は「シルク(絹)」ではなく、「ブック(書籍)」を軸にして捉えられるべきではないかという考えです。
うーん、なるほど……。
興味深いのは、日本が一方的に中国から文化を受容していただけではないということです。
遣隋使や遣唐使などが中国の書籍を持ち帰ってきて、それをそのまま保持したり、それを咀嚼したうえで新たな書籍を書いたりします。
一方、中国では、例えば唐の後に五代十国の動乱期があったりしてそれまで蓄積されていた書物が散逸したりします。
すると、中国に残っていない書物が日本に残っていることがあって、中国側が落ち着いた頃に日本に問い合わせて再びそういった書籍を手に入れようとするということが起こります。
いわば「還流」が起こるということです。
ちなみに。
こういうことが実際起こるので、中国で半ば神話のような形で「秦の始皇帝の焚書坑儒以前の失われた儒教の古典が日本に残っているのではないか」という期待が中国社会で生まれたりもしていたようです。
また。
日本でも漢文で書物を表した知識人もおり、それらは中国本土に持ち込まれます。そして中国の知識人から称賛されるというケースもあります。
このように、この本は日中の双方向でダイナミックな文化交流のありかたを示す内容で、読んでいてワクワクしましたよ。
(どのような書籍がどのようにブックロードを往来したかご興味がある方は是非本書をお読みくださいませ。鷲生もあまり詳しくないので下手にここで文章にして誤った情報をお伝えしてはならないと思いますので)。
多くの執筆陣の論文集なので、内容によってはあまりに専門的すぎて読み飛ばしていたりもしますが、第三部の張競さんの「平安文学にあらわれた美人像――白い肌と体型を中心に――」は面白そうなので今晩読もうかと思っています。
他にも「渤海使と遣唐使―平安朝文学とのかかわりから」「東アジアの地誌学的伝統と世界像の形成」とかも読んでおきたいですね。
分厚いので敬遠していましたが、意外に面白くて良かったです。
どんな本でも、借りてきたらまずパラ見でもいいから中身に目を通すべきですねw
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