俺と君の過去と未来

羽入 満月

俺と君の過去と未来

 二度と振り返らないと決めたはずなのに。


 いつまでも俺は立ち止まっては、君のことを思い出してる。


 思いでの中の君は、何時だって振り返らない。


 「もうやめよう」と、俺があの時言えたなら、きっと未来は変わっていただろうか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あれー真人じゃん。何やってんの?」


 休みの日にコンビニに行こうと家を出たところで声をかけられた。

 振り向けば、中学の時に毎日のようにつるんでいた照和に声をかけられた。


「あー、お前か。コンビニに行こうと。お前こそ何やってんだよ。」

「俺?俺は本屋ー。」


 そう言って照和は、持っていた手提げ袋を掲げる。

 高校に入って中々会うことがなかったので、久々に会えてお互いの近況報告をしながら、しばらく一緒に歩く。

 話ながら歩いていると信号のある交差点までたどり着いた。


「あー、俺こっち」

「じゃぁ、またな」


 そのままさらりと別れればよかった。

 しかし、そうはいかなかった。


「そういやアイツ、元気かな」


 照和そう言ってにやにや笑っていた。

 それを聞いて、すぐ誰のことを言っているのかわかった。

 そして、それはいい思いでを話す訳ではなく、貶そうと話始めたのは、こいつの性格をわかっていれば察しがつく。


「さぁどうだろ?」


 そう平静を装って返事をしたが、内心はドキリとした。

 適当にはぐらかし、「またな」と別れを告げた。


 コンビニまでの道のりでアイツのことを思い出す。

 しかし、段々と足並みは遅くなり、ついには止まってしまった。


 中学の時は毎日会ってた。しかしもう、毎日会うことは叶わなくなったアイツ。

 照和の思いでの中のアイツは、きっとオモチャみたいな感じなんだろう。


 散々遊んで、飽きる前に捨てた「オモチャ」。

 俺の中では、「オモチャ」じゃなかった。

 いまさら何を言ったって、過去が変わる訳じゃない。

 言い訳したって許してもらえないような事を俺たちはやってきたのだ。

 それも、俺たちの学年と教師たちも巻き込んで。


 歩き出してしまったこの未来みちは、立ち止まることを許さないだろう。

 どんなに「あの時」と悔やんだって、時は戻せない。

 だったら、前を見て進まなくてはいけない。

 次に道を間違えないように、ひたすら進むしか許されない。

 痛みも悲しみも全て背負って、逃げ出すことも許さない。

 それが、俺たちが6年間、アイツにやってきた仕打ちの一つだから。


 でも。

 俺はいつまでも振り返っては、君の姿を探してる。

 しかし、ずっと君に背を向けているのだ。

 いつか過去の君に向き合える時はくるのだろうか。

 君とは大違いで、いつまで経っても俺は弱虫で意気地なしだ。


 今、君が目の前に現れたら、いったいどんな顔をするだろう。

 今、俺の前に君が現れたら、俺はどんな顔をすればいいのだろう。



 もう、二度と会えないのなら、俺は君の笑顔しあわせを祈っている。

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