第12話 戸惑いと誘惑

 街がゆっくりと目を覚ます。広い平原から太陽が頭を出す頃。街の防壁の前で俺はアイラを待っていた。

「…主人様」

 呼ばれた方を見る。アイラとケーティ、ライラがこちらに近付いて来た。何故か、ライラとケーティがニヤニヤしている。


(…昨日、あれから何かあったのか?)


 アイラの方に視線を向ける。フードは下ろしていたが、やはりローブ姿のままだ。

「服、買わなかったのか?」

「買いました」

 ローブの隙間から麻袋を見せるアイラ。とりあえず麻袋の大きさからして何着か購入したようだ。視線をアイラに戻す。朝陽に照らされた栗色の髪がキラキラと光る。アイラの瞳や唇がとても艶っぽく、俺は生唾を飲み込んだ。


(こんなに綺麗だったか?)


 昨日までのアイラは、どちらかと言うと可愛いという言葉の方が似合っていたが、今目の前にいるアイラは明らかに違う様に見えた。俺の視線に、首を傾げるアイラ。そんな仕草にも何故か鼓動が速くなり、俺は目を逸らしてしまう。

「主人様、どうかしました?」

「いや、何でもない…」

 ライラとケーティが俺の言動を見て、気持ち悪いくらいニヤついていた。

「…兎に角、用事が済んだなら帰るか」

 平常心を保とうとそう口にする。

「アイラのご主人様」

「…アウラだ」

「アウラの旦那」

 ライラの言葉に俺はそう答えると、何故かケーティがそう呼んだ。

「…何だ?」

 俺は溜め息を吐くと2人に向き直る。先程まであんなにニヤついていた2人が真剣な表情で俺を見ていた。

「アウラさん、アイラの事宜しくお願いします」

「アイラっちは本当に良い娘なんだ。だから」


(そうか、2人はアイラの事が心配なんだ)


 真剣な2人を見て俺はそう思った。

「俺にはアイラが必要だ。だから大丈夫だ。絶対に悲しませたりしない」

 真っ直ぐ2人を見据え言う。その言葉に2人は安心した様だ。頬を緩ませ。

「アイラっち、また買い物しような」

「もちろん、例の話も聞かせてね?」

 再びニヤケ顔でアイラにそう言った。何の話か分からない俺は首を傾げ、アイラを見る。真っ赤な顔したアイラ。

「…あ、主人様!帰りましょう!」

 そう言って俺の手を掴み、家に続く道を歩き出す。俺は半ば引き摺られながら、2人に軽く手を挙げた。2人も笑顔で手を振って応える。暫くアイラに手を引かれる様な形で歩く俺。背後からだとアイラの表情が見えない。お互い無言のまま歩いて行く。その間も俺はアイラに声を掛けるタイミングを図っていたが。


(…どう声を掛けたら良いんだ?)


 上手く言葉が見つからず、悶々としているとアイラの歩みが止まり、ゆっくりと俺の方に視線を向けた。心なしか頬が赤い。

「…主人様ぁ…」

 甘える様な声を上げて、その場に立ち尽くすアイラ。よく見ると頬だけでは無く、呼吸が荒くなり、瞳も潤んでいた。俺は慌ててアイラの正面に膝をつくとアイラの顔を覗き込んだ。

「どうした、どこか具合が悪いのか?」

「…ぅ…ん、身体が」

 アイラは自分の身体を抱き締めながら蹲る。周囲を見渡すが、すでに街からかなりの距離を歩いていた。


(このまま引き返すのは無理だ)


 そう判断し、俺は口笛を鳴らす。『死の樹海』方面。そこから聞こえる咆哮。何かが物凄い速度で俺の所へ来た。俺の前に降り立ち、大きな翼を広げたのは、以前アイラに紹介した炎龍。火龍がその長い首を下げ、俺の身体に擦り付ける。

『…ご主人、どうしたの?』

「アイラが具合が悪くて動けそうにないんだ。家まで頼めるか?」

 俺の言葉を聞いて、火龍がアイラを見つめる。

『…うん?どこか悪いの?…その娘どこも悪く無いよ?』

「…っえ?」

『あー、分かった。お姉ちゃん発…』

 火龍の口を思い切り塞ぐアイラ。無言で首を横に振っている。火龍はアイラに一度視線を向けるとゆっくりと瞼を閉じた。アイラが手を退ける。俺は一瞬の事で固まってしまった。


(…今、物凄い速さでアイラが動いたな)


「とりあえず帰るか」

 俺の言葉に頷くアイラ。火龍の背中に乗る。

『しっかり掴まってて』

 ゆっくりと飛び立つ火龍。心地良い風を受けながら家へ向かった。





 その日の夜、俺の心臓は今まで以上に高鳴っていた。家に帰り、いつもの様に過ごす俺とアイラ。しかし、俺の後にお風呂に入っているアイラがなかなか出てこない。俺は心配になり、お風呂場に向かった。そこで聞こえてくるアイラの声に、俺は激しく動揺する。

「…はぁ……ん、主人…様ぁ」

 声が甘ったるく、色っぽい。その声だけで、俺の身体は熱く滾り、愚息が起き上がり、下半身が疼く。俺は気付かれない様にその場から離れた。


(…っえ?どういう事だ?アイラが?)


 混乱する頭。頭を抱え、考えるが何も纏まらず時間だけが過ぎる。そして。

「……主人様…」

 アイラの声に、俺は反射的に振り向き、固まる。何故なら、アイラが黒くスケスケでセクシーなベビードールで俺を見つめていたから。





 あとがき


 ああ〜!忙しい過ぎて発狂しそうや〜!しかも、書く暇無し。何とか今回書き終えたけど、更新はすぐには無理そうです…

 


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