第11話 変化と初恋、発情期〜後編〜
その日、私は主人様と1ヶ月ぶりに街に来ていた。どうやら、私の服を買うのが目的のようで、辺りをキョロキョロしている。
「…あれ?もしかして、アイラっち?」
「っあ、ほんと。アイラ〜」
聞き覚えのある声が後ろからした。主人様と私は振り返る。やっぱりケーティとライラだった。私は手を挙げる。2人はとても心配していた事を話す。私は申し訳ない気持ちで一杯だった。
「…フード被ってたのに、よくアイラだって分かったな」
感心したように言う主人様。
「コイツ、誰?」
ライラが私を強く抱き締め、ケーティが低い声で言う。主人様がたじろぐのが分かった。
「私の主人様です」
言って恥ずかしくなった。でも、2人には知って欲しかったから。気恥ずかしさに悶えていると、ライラとケーティに私の服を買いに行って欲しいと主人様が提案していた。呆然としてしまう。いつの間にかお金の入った小袋が手のひらに乗っていた。そして、主人様はそのまま去って行ってしまった。
「…酷いです」
愚痴を溢しながら、目の前のフルーツのタルトを口に入れた。今私達がいるのは飲食店。
「まぁまぁ、そんな事言わないの」
「そうだよ。良いご主人様じゃん」
不貞腐れる私に2人は優しく言う。
「だって、主人様に選んで欲しかったのに」
「ウチらに気を遣ったんだよ」
「…でも…」
納得が行かない。気が付けば、すでに4個目のスイーツに手が伸びていた。
「でも、久しぶりだね、こうやってお喋りするの」
嬉しそうに言うライラ。そんな表情を見ていたら、私も不貞腐れる表情はもうやめようと思った。
「…あのね、私ね。今凄く幸せなんだ」
「「…詳しく聞かせて」」
私の言葉に、2人は前のめりで食い付いた。若干引いたけど、私は2人が仕事でいない間から今日再会するまでの話しと、最近私の身体の異変を2人に話した。
「…恋ね」
「うん、完全にソレな」
同じ様に腕組みした2人が頷き合う。
「…恋?」
「そう、アイラはご主人様に恋をしているのよ」
言われてもあまりピンと来ない。
「よく分からないよ…」
私の言葉に2人は溜め息一つ。
「いつもご主人様の事考えちゃう?」
「うん」
「近くにいると胸がドキドキする?」
「うん」
「笑った表情を見ると」
「私も嬉しくなる」
「恋じゃん!恋してんじゃん!」
ライラの問いに回答していると、テーブルを叩き悶えるケーティ。ライラも『気持ちに気付かないなんて、しょうがないわね』と言う様に微笑む。だって、知らなかったから。これが恋するという事なんて。自覚すると早いもので、身体が一気に火照る。それを感じ取った2人。
「…アイラ、貴女」
「…?」
口元を押さえて何かを言い掛けるライラ。私の腕を掴むと、飲食店を後にし宿へ向かった。泊まる部屋を手早く決めると、今日泊まる部屋に慌てて入った。
「…どうしたの?」
息を乱しながらライラを見た。ライラもケーティも息が乱れている。
「アイラっち」
「貴女、発情してるわ」
「…発情?」
首を傾げる私。私の反応に2人は再び溜め息。
「私達獣人はね、番いになりたい人を見つけたら、その人の子どもを産みたくなるの」
「今のアイラみたいにね」
2人は真剣な表情で話す。冗談を言っている様子はない。
「…私、主人様に発情しているの?」
私の問いに無言で頷く2人。身体の疼きは少しずつ強くなっていく。
「…どうしよう。嫌われたくない」
訳も分からず不安になる。2人を見ると、優しく抱き締められ。
「アイラはご主人様の事好きなんでしょ?」
「…好き」
「ご主人様は、アイラを酷い目にあわせてないでしょ?」
「うん、いつも私を気遣ってくれる」
「なら、心配無いわ」
「どうして分かるの?」
「だって、あの時のアイラを見て、それでも必要としてくれた人でしょ?」
そう言われて私は思い出した。いつ処分されるか分からない私を。ボロボロで痩せ細っていた私を必要だと言ってくれた。
「もう大丈夫」
2人を見る。もう迷いはない。
(…私、主人様と一緒にいたい)
あとがき
投稿率低くて申し訳ありません!マジで、仕事が忙しくて。ついでに、プライベートでも色々問題ありまくりで、なかなか更新出来ず…。
それでも最後まで書いていきますので、皆々様の温かいお慈悲で見守って頂ければ幸いです。
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