第10話 変化と初恋、発情期〜中編〜
主人様はとても不思議な人だった。私が来てから、ずっとソファーで寝ているから。
「アイラが来る前からソファーで寝てる」
(…嘘つき。匂いで分かる。今まで使ってた)
私が不満の表情をしても、誤魔化す。
「朝が早いからソファーで大丈夫だ。ベッドはアイラが使え」
そう言って、主人様は寝てしまった。初めてこの家に来た時、私はとても警戒した。だって、ここには私と主人様の2人きり。もしかしたら嫌な事をされるかも知れない。でも、主人様は何もして来ない。それどころか、私のことを優先してくれる。それがとてもむず痒く、でも安心出来た。ようやくベッドから動けるようになって、私は出来る事から始めた。ゴミを一つに集めて、床を磨く。でも、体力も筋力も衰えた身体は、すぐに疲れて動けない。私は休み休み床を磨いた。その日は、部屋全体の1割位しか出来なかった。落ち込む私に、主人様は頭を優しく撫でて。
「ゆっくりで良い。無理するな」
そう言ってくれ、栄養のある食事を与えてくれる。
(奴隷の私に、どうして優しいの?)
出逢った時から主人様は優しかった。高価なエリクサーを与えてくれ、お風呂やベッドまで。
(…信じても良いの?)
それから私は主人様を常に目で追い始めた。庭で育てている野菜の世話や薬草の採取。釣り竿を持って、数匹の川魚を片手に満面の笑顔で私に見せたり、時には野獣を狩って庭先で捌く事も。でも、1番驚いたのは『火龍』と呼ばれるドラゴンが主人様に懐いていた事。
『たまたま別のドラゴンに襲われているところを助けたら懐かれた』
という事らしい。本当に不思議な人。
ある日、主人様の口から『それ外したいな』と聞こえた。私は不安になり主人様の前まで近付いた。無言の主人様。ずっと私の首元を見ている。
(私、捨てられるの?)
不安が口から溢れ出た。悲しみの感情がゆっくりと全身に広がる。すると、主人様はとても慌てて。
「いや、違う!違う!そうじゃ無くて」
私の首元の奴隷の証であるチョーカーに触れ。
「コレ、要らなく無いか?って意味だ」
言っている意味が分からない。だって、私は主人様の奴隷で、このチョーカーはその証。なのに、チョーカーは不要だと。私がそれを言うと何故か止められた。
「俺は、アイラが必要だからここに連れて来たんだ。決して奴隷だからって訳じゃ無い」
(私が必要?奴隷だからじゃない?……私、ここにいても良いの?)
それを認識すると、身体の奥が疼いた。何か分からない衝動が私を襲う。私は必至に堪えた。主人様はオロオロしている。私はこれ以上主人様を見ていられない。何とか誤魔化すように床磨きを再開した。
その日から、私の身体はむず痒く、切ない疼きに支配される。主人様を見つめる度に、その疼きは強くなった。疼きが酷い時は、床磨きすら出来ない。
(私の身体、どうしたの?)
でも戸惑いつつも、主人様を目で追ってしまう。そんな日が1ヶ月程続いた。その間、ずっとローブで隠していた私の身体は、元の女性らしい身体へと戻っていたのだった。
あとがき
暫く投稿率下がります。休み無くて死んでるんで、ボロボロです…
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