ワン・ハンドパワー

最悪な贈り物

第1話少年たちよ…人間を超えろ

ここら辺で流星群なんて珍しい。


学校の制服を着てリビングに降りるとテレビでニュースがやっていた。

『2128年7月31日のお天気です。』

天気のニュースが流れると同時に妹の声がした。

「あ!タクヤ兄!降りた?ご飯テーブルの上に置いておいたからねー!行ってきまーす」

あれは妹の唐沢紗希。(からさわさき)俺の義理の妹で1歳年下だ

そして俺は唐沢拓哉(からさわたくや)高校2年生で東庄高校というところに通っている。

「はぁ、紗希も少しくらいは俺に気を遣ってくれよ」

その時、ふとニュースに目をやると流星群について報道されていた。

『今回の流星群は8月1日から8月14日に降ると予想されたいます。』

「流星群か」

俺は朝ごはんを食べながらボソッと言う。

『今年はHGカプセルが降るとされています。近くに降ったらすぐに避難するようにお願いします。』

HGカプセルとは、地に落ちた瞬間とてつも無い高熱波を出すカプセルのことだ。

俺の両親はHGカプセルの高熱波で死んで死んでいる

詳しいことは国の治安のためとか言って幕府が全てを消し去っている。

俺もあの時のことはよくわからない。でもいつか必ず暴いて見せる!幕府が隠しているからには何か裏があるはずなんだ!絶対に!

「ピヨピヨ」

時計からウグイスの声がした

「うわ!もうこんな時間!」

時計を見ると針は8時を指していた。

さっきまで見ていたニュースも終わり、次の番組に移っていた。

「い、急がないと」



「ふう、間に合ったか…」

「遅いぞ、タクヤ。また、用水路に足でも引っかかったか?」

「なわけないだろ」

こいつは俺の唯一の友達にして幼馴染の島安。俺と同じでHGカプセルの高熱波により両親を殺されており一人っ子なのでいつも家には自分1人しかいなくて今まで生きるのが辛いようだった。

こいつ以外で俺はまともに喋れない。

「てかお前はいつになったらその長い前髪を切るんだよ。お前、案外イケメンなんだから髪切ってメガネじゃなくてコンタクトにでもすれば告白してくる女子の1人や2人はでてくるぞ?今のお前なんて言われてると思う?クs…」

「クソインキャメガネ、貞子、男バージョンの成り上がり、etc…」

「…」

「てかそんなに俺は彼女欲しい側の人間じゃないから…」

「そんなこと言って〜!どうせ、彼女でもできたら、いっつもニコニコ笑ってるんだろ?妹がいるだけでもお前は生きてるのに〜!」

俺は島安の口を塞ぐように言った。

「その話は無しだ」

「おっと、ごめん」

島安は少し静かになった。

『ホームルームを始めるぞー。皆んな席につけー』

先生の愛想もないような声が教室に響く。

俺は教室の一番奥の角の席で、島安はその前の席だ。

「さっきはさ、あんなこと聞いちまってすまんな!」

「いや、いいよ。誰にだって失敗はあるからな」

島安は俺の不機嫌さに少し気づいたのか両手を合わせて俺にこう言った。

「じゃあさ!今日なんか飲み物奢るよ。ほんの気持ちだから受けっとってくれ!」

俺もそこまで言うなら仕方ないと思い、腹が立つような感情を抑えて

「分かった。それで手打ちにしようか」

と、少し小さな声で言う。

「よし!放課後の5時に稲生神社前で待ち合わせな!」

「オッケー」

俺は気にもしないような声で答えると、島安が少し口角を上げた。俺でもわかるが何故か少し嬉しそうだって『何故か』なんてつける必要もないか。


3限目 体育

俺は体育だけが唯一と言っていいほど好きな教科だ。

理由は先生にある。

「ほーい、それじゃあ規律、お願いしまーす」

『お願いしまーす』

「これから、まずバレーのサーブの練習をするので2人でペアを作ってください。唐沢と島安は俺と一緒な」

俺らはいつも先生と一緒にすることが多い。

「行くぞー」

「ほーい」

俺の方にボールが来ると俺は音も鳴らさずに先生の方へボールをパスする。

「ちょ、太田先生来てくれよ!タクヤのやつ、女子が告って来ても絶対に振ってやるって言ってんですよ?」

島安はパスを先生に渡すと同時に今日の朝の出来事を話した。

「おー、タクヤお前けしからんなー。その年で女子に興味ないフリとかむっつりスケベだぞ?」

「いやいや!俺は別にフリでもなくほんとに興味がないだけで…」

こんな風に俺たち2人と太田先生は仲が良く、担当教科の体育の時と来たらすぐにペア制にして俺らと会話をして10分ほどサボってから体育のちゃんとした授業をするのが日課となってしまった。

俺らと太田先生の付き合いは1年の時からで意外と仲が良く普通の友達と同じ感じで喋ることが多かった。

「はあ、君たちのお年頃はいいよなぁ。恋とか余裕でできるし。」

「先生も恋したりしないんですか?まだ24歳ですよね?」

「仕事が忙しいんだよ。世の中の大人なんてだいたいそんなもんよ?仕事してたら一日終わってて、それが積み重なって1年が終わる。だから高校生のうちに恋とかいろんなもんしておくの。青春は楽しめ?」

「でも、俺モテないからなー」

「こん中での一番の希望はやっぱタクヤか?」

「え、俺なんすか?」

「俺なんすか?って全くこれだからイケメンはよぉ!」

「羨ましいねー」

少し羨ましいと言われて悪い気もしなかった。

「あ、そうだ!先生今日の放課後帰れそう?」

島安は話題を変えると同時に俺にボールをパスして来た。

「いや、今日は無理そうだが、またどっか行くのか?」

「今日は島安が俺の為にジュースを奢ってくれるらしいんですよ」

「そうなのか!でもすまん!俺は今日は残業になりそうで無理そうなんだ」

「あぁ、そうか、まあ仕方ないよね!頑張れよ仕事!」

島安は少し残念そうだった。俺も残念だと思った。

「気をつけるんだぞ?不審者とかにつれて行かれないようにな」

「俺らもう高2だぜ?そんなことあるわけないよ!」

「確かにな!」

とたん、みんなで笑い合った。


夕方…

稲生神社前…

「あ、いたいた!」

「よう、来たか」

「それじゃあいつもの自動販売機にでも行こうぜ」

俺らは通学用の自転車に乗り近くの自動販売機に向かった。

夕日はまだ沈んでなくて、オレンジ色の太陽が凄く眩しかった。

「今日、ようごはんはどうすんの?」

「妹に頼んでまだ作ってもらってない。それに今日妹は女子会してるらしくてな」

「女子会か〜いいなあ」

俺は小さく笑う

「お前、インキャすぎて男子会にも呼ばれてないだろ?」

男子会とは、みんなでゲームや遊び道具を持ってきて朝日が登るまで寝ないという東庄高校の男子生徒が土曜日にする遊びのことだ。

メンバーは招待制で男子会をしている人が他のまだやったことのない男子を誘わないといけない。誘われない限り、自分から『行っていい?』などと聞くのは御法度である。

「男子会なんて俺はあんな輝かしいもの行けないからな。それよりも着いたな」

「じゃあ、俺は…って!!隠れろ!!」

「どうしt…わぁ!!」

俺は島安の腕を引っ張りすぐ近くの建物の影に隠れた。

「おい!どうしたんだよ!」

俺は恐る恐る指を刺しながら言う。

「あれ…」

「あ、あれは!学校1の美女!如月真紀(きさらぎまき)さんじゃないですか!!話しかけに行っていい?」

「やめて!もしこっちにきたら会話が重すぎて俺がしぬ!」

「いや、インキャの運命なんて俺は嫌だから動くぜ!!」

俺と島安がそうこうして居るうちにマキは缶ジュースを買い、蓋を開ける。

プシュ!と炭酸飲料の開ける音がした。

「まずい!俺の自転車には番号が!それを見られってしまっては誰かバレてしまう!」

「別にいいじゃん、特にバレても分からないだろうし…」

マキは隣にあった自転車の番号を見ると…

「タクヤくん…」

と小さな声で呟き、少し顔を赤く染めて頬に手を当てる。

「ド、ド、ド、どうしよ」

マキは慌てるような仕草をしてから空き缶をゴミ箱に捨てて帰った。


「タクヤ?お前…って、うわ!?何石像みたいに固まってるんだよ!起きろ!起きろ!!」

「はっ!!」

島安は呆れた目で俺を見る。

「な、なんだよ」

「全く、お前はあんな美人を取りやがって…」

「い、いやいや!!勝手にその…いや、なんでも無いです…」

俺は黙ろうとしたが島安が逃げさせないように俺の肩を抑える。

「さて、事情聴取と行こうじゃないか。」

「なるほどねえ…近所のお隣さんで子供の時からよく遊んでいて、いつの間にか好意を引かれていたと…すんげえ主人公主人公てるねぇ…」

「良いじゃないか別に俺主人公なんだし」

島安はため息をついた。

「まあ確かに、設定的にも仕方ないと思うよ?うん。でもそれを俺に言わないのもどうかと思うけどなあ」

「ま、まあそこのグレープサイダー飲んで機嫌を取り戻しましょう!」

「まったく」

島安は片手に缶を持ち一気に口の中に放り込む。

「ぷはー!!うまい!」

「よかったな」

「それよりもどうすんだ?マキとのこと」

「どうするって?」

「もしお前に告白でもしてきたらどうすんだ?マキにはファンクラブができるくらい人気なんだぜ。お前みたいなインキャが彼氏とか、みんなが知ったら顔、真っ赤に変えて殺しに来たりもするかもよ?」

「否定できないのが悲しい。まあでも、俺はマキの事、別に好きでもないから断るかもなー」

「それが好きになってくれた人への感情かよ!!」

ツッコミのような勢いで島安は俺に言った。

だが、そう言うのも無理もない。

俺はそれってほど女子が好きじゃないんだ。と言うよりも、学校がそもそも好きじゃない。クラスに馴染めない俺を、他のみんなはどう思ってるかなんて考えただけでもゾッとする。

と、その時だった。ふと、島安が空を見上げると

「あ!流れ星!」

と言った。

「流れ星?そんなの何処に…って本当だ」

俺が空を見上げると夜の空一面中に流れ星が輝いていた。

「あれ?でもこれってHGカプセルじゃ…」

「ふん、甘いな」

かっこよく言おうとしたのか逆にゾッとした。

「なんだよ?」

「流れ星ってのは、宇宙の砂利であって大気中で全て燃えてしまうんだ。だから、あれはHGカプセルじゃないぞ?」

「なんだびっくりしたー」

「じゃあ、そろそろ帰ろうぜ。俺、明日締めきりの物理やってないからさ」

「あ!」

俺はある事に気が付き大声を出してしまう。

「な、なんだ?」

「俺も物理やってなかった!しかも物理忘れたし、学校に」

「じゃあ、取りに行ってくれば?校舎前まではお見送りしてもいいけど?」

「いや別にいいよ。今日はありがとな島安」

「おう、じゃあな!タクヤまた明日学校で~」

俺は自転車に乗ると少し上を見ながら学校に行った。

俺らが自動販売機に行った時はまだ夕方だったがいつの間にか日が沈んでいたんだ。

俺は恐る恐る電気のついた教務室の前を通り、自分の教室2年C組にやってきた。

C組は窓の外からでもグラウンドが見えるので、昼休みや授業中は外を見ていたりする。

あまり気にしなかった教室の外を流れ星が空を彩っていたので少し見入ってしまった。

「綺麗だな…」

「ズゥン!!!」

校舎のグラウンドに何かが落ちた音がした。

グラウンドを見ても土埃が舞っていてよく見えなかったが、何か流れ星のようなものがグラウンドに落ちた気がした。

「な、なんだ!?」

俺は先生達にバレるかもしれなかったが、好奇心には勝てなかった。

グラウンドに着くと土埃の中で青く光っているものが見えた。

「な、なんだあれは」

俺は吸い込まれるかのように青い光に近づいた。

「光の発信源はこれか」

俺は地面に落ちていた青い光を摘む。

すると「バチっ」と体全体に電気のような痺れを感じた。

その時だった

「おい!君!何をしているんだ!」

見回りの先生なのか光に気づいて此方へと向かってきた。

「あ!こ、これは!」

「君!夜の学校に侵入すりゅなんてええええええええ」

その時、俺は土埃で良く見え無かったが人影のようなものがぐちゃぐちゃと崩れているのが見えた。

「うわー!な、なんだこれ!?まさかこれHGカプセルか?HGカプセルは高熱波で人間の皮膚にしか熱が伝わらないけど、俺はじゃあなんで生ているんだ?」

「それは君の血液型がC型だからじゃないか?」

何処からともなく声がする。

「誰?」

今度はちゃんと声の位置がなんとなく分かった。

「俺はASK(アスク)の者だ」

「ASKってまさかHGカプセルの調査を専門にしている幕府の組織!?」

「ご名答」

声の持ち主の姿は土埃のせいで未だに分からない。

「それと、青い光が消えているだろ?もうエネルギーが無いってことだ」

「そ、そうなんでっ…くっ!!」

俺は前方からの凄まじい風によろける。

「な、なんだ!?この風は!?」

周りに舞っていた土埃が全て吹き飛ぶ。

現れたのは背中に巨大なプロペラと大きな刃の出たガジェットを背負った男がいた。

「アスクの役割はHGカプセルの回収、調査、そして、HGカプセルにより強化された超能力者の排除だ。」

「超能力者!?」

「俺らは超能力者をハンドパワーなんて言ったりする」

汗を垂らし俺は言葉を繰り返した。

「ハンドパワー…」 

「ハンドパワーが束になって襲ったりでもしたら、人間の文明は必ず滅ぶ。だから、殺す。それに、超能力者はもう人間ではない。HGカプセルも何処から降って来るかも不明。言わば現代の場違いな工芸品とでも言おうか」

俺はその意味がわかった。

HGカプセルには二つの機能が秘められている。

高熱波によって人間をドロドロにさせる機能

そして、C型という特別?な血液型を持っている人間に超能力を授け、人間を超えさせる機能

そして、HGカプセルは血液型がC型の人間は、人間の域を超えてしまうこと

「状況がよくわかったかな?後ろの鎌みたいな機械はお前を殺すためにあるんだ。こっちも仕事でやってる事だから仕方なく、命を狩らせてもらうよ!!」

ガジェットからジェットが噴出しガジェットの男はタクヤを斬りかかる。

「シャキン!!」

タクヤは左の腕が無くなる。

「ぐああああああ!!」

激しい悲鳴が上がる。

「超能力者の基本的な機能を教ええてやろう。まず、身体強化。次に再生機能、そして、個人別のハンドパワー」

「クソ!!能力どころか再生もしない!!」

俺は唇を噛む。


一方その頃

職員室…

「てか小林先生遅くね?太田先生ちょっと見て来て」

「は、はい!」

俺は太田慎吾(おおたしんご)今日はあいつらとの飲み会(?)を我慢してまで学校で仕事をしてる、新任の教師だ

「何か、グラウンドから音がするような…」

俺は音のするグラウンドに行った。したら…

「まさかお前はただの人間なのか!?だが、高熱波が効かない奴は触れただけで能力がってめんどくせええええええええ!!」

ガジェットの男は頭の髪の毛をぐしゃぐしゃにする。

「もう、なんでもいいや!!殺しちまえば全部解決することだからな!!」

ガジェットの男は再び俺を切り刻もうと襲いかかる。まさにその時の顔は殺人を快楽だとしか思っていないような、奴の顔だった。

「ぼ、僕は、逃がされてもいいんじゃ無いですか!?超能力者じゃなくて普通の人間なはずなんだから!!」

「これは…もう俺の気分だからな。お前を殺さないと気持ちが晴れねえ!!!すまんが俺の為に死んでくれ!!」

グラウンドに出ると大きな刃物を背中から出した危険人物がいるのを目の当たりにして、俺は足が震えた。

刃には血がついていた。

この学校に来たことを初めて後悔したのだ。

「だ…だ、っ!!」

口から言葉が出なかった。

心の中では誰だと言ったはずだった。

「ん?ま、まさか目撃者か?めんどくさい事になるな…消しておこう。高熱波の影響といって誤魔化すために燃やしておこうか」

後ろのガジェットから大砲のような物が出た。

「ん?太田先生?」

「その声!まさかタクヤくんか!?」

タクヤくんは俺の教え子の中でも一番仲が良い生徒だ。

俺は体育の教師でタクヤは運動神経が一番良かったが、他のみんなと喋ることが殆どなかった。

だから俺が会話相手になったら意外と意気投合したんだ。だから俺はタクヤとたまーに放課後サッカーのパスの練習でもしていたんだ。

反射神経も良かった。俺とは違ったからドッチボールなんて投げることはしなかったが殆どのボールは全て避けていた。

「先生!逃げて!!」

逃げられない。

「俺は逃げられないんだよおおおおおお!!!」

そういうと先生はガジェット男に向かって走り出した。

「ほほ!勇気あるねえ!絶対に殺してやるよ!!!!」

大砲のようなものから一気に赤い火が噴き出す。

でも、先生はそれでも前に突き進んだ。

「うわあああああああああああああ!!」

気合の入れた声が悲鳴のように感じた。

「バタン!!」

太田先生は火によって腕を火傷してしまい、気絶した。

「はは!どいつもこいつも雑魚しかいねえじゃねえか!!死ねぇぇぇ!!!」

ガジェット男は勢いよくガジェットの鎌を振り下ろす。

その時、俺は頭で考えるよりも先に体が動いていた。

俺の体は鎌の峰を摘み刃を止めていた。

そして、俺の体と心はこう言った。

「おい、太田先生は俺の友達だ!ぜ、絶対に殺させなんてさせねえ!!!!」

と。

「んな!?ここからさっき居たところまで10mは離れていたはず…なのにどうやって…ハッ!?」

鎌を止めた右手の甲が急に光出した。それは簡単に書かれた『眼』のような形をしていた。

「それは、ハンドサイン。超能力者になった証だ」

「そうなのか!?」

気づくと俺の左腕はいつの間にか塞がっており、力を入れると左腕が生えてきた。

「なんだこれ…」

「それじゃあ、合法的に殺せるってことだな!!」

「くっ!!やめろぉ!!」

俺は拒否するように手を横に振ると、手を振った場所に裂け目のようなものができた。

「な、なんだこれ!?」

裂け目はモゾモゾと動くと広がり中から鼻の長い象のような見た目をした動物が出てきた。

「なんだ?雑魚みたいな形しやがって。貘か?」

貘とは悪夢を食べると言われている中国から伝わった妖獣だ。

「貘?そんなんでどうやってって…あ!」

「なんだ?そんな奴で俺に勝ったとでも思ったのか?」

「知ってるか?貘ってのは悪夢も食べるけど、他の物も食べるんだ」

貘は大きな口を開ける。

「それはな…鉄とかだ!」

「なんだと!?」

ガジェットのパースは一つ一つの鉄の塊のようにどんどん溶け、バクの口の中に吸い寄せられていった。

「お、おい!?俺の神経接続型アームガジェットが!?」

「お前はやりすぎたんだ。その調子だと、どうせ無関係な人たちも殺したことがありそうだな」

背中についていたガジェットが完全に貘に吸い込まれると腰を地面について怯えながら

「や、やめてくれ!!い、命だけは!!!」

「命も何も奪うつもりはないけどなぁ!少し反省してくれよな!!!」

そういって俺は男の顔に一発、拳で殴り込む。

「そうだ!!先生!!」

俺はすぐに先生の倒れている場所に行った。

「クソ!とてつもない火傷だ!でも、片手だけで命に別状はなさそう。とりあえず良かった」

いつの間にか鎌で切られた切り傷も治っていた事に気づいた。

「そんなことよりも!救急車!」

救急車に先生は運ばれると俺は今までの疲労がグッと来た。

「はあ疲れた。帰ったらすぐ寝よっと」


多分この時からだ

俺の物語が始まったのは…


唐沢拓哉

ハンドパワー:次元

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