第5話
それから進んで、次に戦ったのは塔の前。
俺がアルトに説教をしていたおかげでジャックの部隊に遅れをとり、俺たちは後から参戦する形になっていた。
今の状況は動きのない銃撃戦。ジャックたちを食い止めることが目的のようで、おそらくもうすぐ仲間が来る。
「後ろから奇襲する。もう少しそのまま注意引いてて」
『了解』
インカムでジャックに指示をして、俺たちはバレないように裏側に回る。実際は監視カメラでバレているだろうが、だからといって対応できないだろう。
「グレネードから行く。その後アルトとアリスで襲撃、俺とライトで援護する。場所はバレてると思え」
そう指示しながら、俺たちは敵部隊を三方から取り囲むように分かれた。もう一方は塔なので逃げ道はない。
ライトから準備ができたとインカムで言われ、俺は数発のグレネードを一気に投げ込んだ。
グレネードが爆発し、煙が上がる。その煙に紛れてアルト、アリス、そして一応作戦を聞いていたラヴィとシュガーも敵に飛び込み、敵部隊は混乱状態になる。
そこに残った四人が正確に銃弾を敵に放ち、一瞬のうちに敵部隊は全滅した。
ここまでやってて察していたが、コイツらは帝国のスパイほどの実力も持ち合わせていない。ただの警備員もしくは新人。そりゃ勝てる。
まあスパイは警備係じゃないからこんな人数のスパイがいるとも思っていないが……こっちの行動から勘付かれていたと思っていたので一人くらいはいると思っていた。
だがこれは好都合。ここからは帝国のスパイが寄って来るより前に全て終わらせて帰るのが理想だ。
そして俺たちの部隊が塔の中に入り、ジャックたちが見張りをするというように分かれた。
そこからは簡単だった。
中にいたのは戦闘経験もない研究者たち。簡単に掻い潜って、データを移行させようと操作していたようだったがそれを止めて俺のパソコンに全てデータを抜き取った。おそらくどこかにデータは残っているので、帝国からデータが無くなるわけではないだろう。
他の三人は紙で残された資料が無いかと探していたが、さすがに全てデータ化されていそうだった。正直データさえ手に入れば大丈夫だ。
さらに今回の襲撃の監視カメラ情報を全て削除、奇跡的にどこかに送られている形跡はなかった。
そしてそこから何もかもが上手くいき、全員無事に共和国まで帰ってくることができた。
◇ ◇ ◇
「と、いった感じで」
俺はここまでのことを自分の班の《王様》、ルークに報告した。
「とりあえず無事に帰ってきてよかったよ。新人の班にできる任務なのかと思っていたからな」
「じゃあ何で止めなかったんだよ」
「若手を育てるのも急務だから、仕方ない」
「もっと部下を大事にしろよ」
だが、俺としても初めてちゃんと班を指揮したので、いい経験になった。ルークはそれも期待していたのだろう。俺も新人ではないが若手ではある。そんな俺を育てることも必要だと。
「そういえば、その間元の任務はどうなってる?」
俺の今の任務は、共和国側の重鎮の娘の警護。と言っても、拒否されたので親公認友達に情報提供を頼んだ。そしたらその対価に付き合ってくれと言われ、なぜか恋人関係になってしまった。もちろん俺に恋愛感情はない。
「少し怪しい人物が」
俺が帰ってきてホッとしていると、その親公認友達から後をつけられている気がすると連絡があった。
「まだ詳しく調べてないけど……気付くくらいだから素人なんじゃないかとは」
「そうか。素人でもそれに便乗して帝国が何かしてくる可能性もあるから気をつけて」
「わかってますよ」
例えば誘拐して隠しておいたらそこから拉致されるとか。
「ふぅ……やるか」
俺はそう呟きながら伸びをして、まだ暑い俺の日常に戻っていった。
あの班を少し羨みながら。
高校生スパイの夏休み 月影澪央 @reo_neko
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