第4話
そして俺たちは、それぞれの場所に準備を終えた。
俺は持っていた四角い防弾仕様の鞄からパソコンを取り出して、遠隔で爆弾を操作する。
「二十秒後、爆発する。それが合図だ」
小さなインカムを通じて他のメンバーにもそう伝える。
それからパソコンをしまい終えると同時に、爆弾が大きな音と煙を上げて爆発した。
それを合図に、どの部隊も塀を乗り越えて、帝国の実験施設に入っていく。
こうも簡単に塀を乗り越えられるのは正直おかしな身体能力をしていると最近思った。だが、それくらいじゃないと銃撃戦なんてやっていられない。
俺とアリスは塀を乗り越えてから真っ直ぐ目的の塔に向かった。地図は当たり前のように覚えている。
もちろん、相手は侵入されたことをセンサーによって気付いているので、捕まえるために十数人が束になって行く手を阻む。
俺たちは目を合わせて頷くと、まず俺がグレネードを投げ入れて人を減らした上で混乱を生み出す。
そこにアリスが突っ込んでいき、ナイフと拳銃を駆使して全員を躊躇なく蹴散らした。
「よしっ……」
そして俺たちはそのまま止まることなく塔に向かう。
それを繰り返し、十分ほどで合流地点のすぐ側までやって来た。
「まもなくCD合流地点」
『こっちも』
ライトがそう言ったのがインカムを通じて聞こえた直後、合流地点にライトとアルトが現れた。
「行こう」
ここからは迂回路がない。あるけどおすすめはしない。それをお互いにわかっているので、おそらく正面衝突は避けられない。なんなら後ろから回り込まれる可能性もある。ただ、全員で動けば大丈夫だ。
そして少し進むと、予想した通り前から十数人の大群。よく耳をすませると、後ろからも何人か来ているように思える。
俺は左手でグレネードを取り出し、口で安全装置を外して前方から来る奴らを処理して後ろの対応をしようと思った。
だがその考えには至らなかったのか、俺のグレネードは見えているはずなのに、後ろにいたアルトが距離を詰めて、敵に突っ込んでいく。
確かに急に突っ込んで来られたら向こうも困るだろうが、あの人数なら対応されてしまう。
「おい!」
そう言ったつもりだが、安全装置を咥えたままのおかげでおそらく届いていない。
このままグレネードを投げたらアルトまで負傷するので前には投げられない。人数は少ないが、ちょうど後ろから来ている方に投げるしかなかった。
そして後ろは完全に障害が無くなったので、全員で前に集中する指示を出す。
「おい待て!」
俺がアルトの後ろまで行ってもう一度そう言うと、アルトはそこで急に止まる。まだ距離があったので止められてよかったが、この状況は少しキツい。
グレネードありきで考えていたが、もう後ろに使ったのでここで使ってもそれほど被害は出せない。そうなった時、四人でこの人数を相手にするのはキツいかもしれない。
だがそこでアリスやライトが一人ずつではあるが削っていくのが見えたので、やるしかないと思った。
俺は上に飛び上がってアルトの頭上高くから二丁の連射式拳銃で大部分を一気に薙ぎ払った。
服の裏ポケットや背負っている特殊な鞄に武器を多く隠しておいてよかったと思った。
立っているのが残り数人になったところで、アルトが刃渡りの長いナイフを振りかざして全員を倒した。
なんとか全員無傷で生きていられた。本当に危なかった。
「おいアルト……」
「何だよ……止めやがって」
「あれ、本当に行けると思ってたのか?」
「ああ思ってた」
あの人数を実質一人で引き受けるなんて無理だ。でも突っ込んでいくのなら周りから援護することも難しい。あれで行けると思っていたなんてどうかしている。
「じゃあお前は俺たちの動き見てたか? 仲間の動きを」
「それは……」
「お前は一人でやってるんじゃない。俺たちは四人いる前提で動いている。お前が勝手な動きをするだけで他の三人も危険に晒される」
「でも構成を見る限り、俺がああいう動きをして合わせるものじゃないのか」
「じゃあ聞くが、俺たちがお前に合わせたところで勝てる状況だったか?」
アルトは黙ってしまった。そもそもどう合わせるかもわからないのに、それで勝てるかどうかなんてわからない。
「今回は危険が伴うことを絶対に避けなきゃいけない。少しでも安全に、生きて帰らなきゃ意味がない。俺が責任を負うとは言った。俺が責任を負うからには俺の言う通りに動いてくれ。頼むから」
確かに一人で戦うスキルはあるし、そういう勝負勘もある。でも、連携を必要とする状況でアルトを中心に戦うことは難しい。それを分かって合わせることができない。それなら俺が全部従えた方が都合がいい。
まずは任務を成功させるところから。自分たちで協力するのはその次だ。
「……行くぞ」
俺はそう言って三人を引き連れて先に進んでいく。
実は、ジャックに少し頼まれていた。まずライトの背負いすぎた責任、そしてアルトの高すぎるプライド、それをどうにかしない限りこの任務は成功できない。
ライトの場合、その責任を背負わせてしまったのがジャックなので自分ではどうにもできない。
アルトは明確に自分より強くないと従わず、ジャックがそれをしてしまうとずっとジャックの言いなりになるだけで班全体のパワーアップにはならない。
だから班にずっといない俺に全部頼んだということみたいだった。
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