第300話 虎視眈々と (side.東西南北)


(side.東堂明里)


ソフトボール支部の練習が終わり、シャワー室で僕はふと考えていた。

麗奈との現在位置についてだ。


一年間で色々あって、最後に打ち上げ会の旅行では特に……特に色々あった。


そこで麗奈は僕をそういう対象として見てくれている事が分かって嬉しかった。

けど、それ以降は目立った進展がない。



(……あれ? 僕、ソフトボールしてる場合じゃ……)



いやいや!!

今週末インターハイがあるのにその考えに至るのはマズい!!

一旦、この問題とソフトボールについては切り離して考えよう。


と、とにかく。

僕はまだ麗奈と付き合ってはいない。

この宙ぶらりんの現状を打破するためには、麗奈が何故僕の告白を受けて入れてくれないのかを理解すべきだ。

そして、それに付随する気掛かりな問題もまだ残っている。


ゆーちゃんとの関係だ。


麗奈との二股(?)を許容してくれたゆーちゃんもまた、つかず離れずの距離を保ってくれている。

いや、多分違うのかな? おそらくゆーちゃんは……



「あの……」


「おや?」


「太齋先輩……となりのシャワールーム空いてますよ」


「おぉ。私とした事がうっかりしていたよ」



気付いたら太齋先輩が僕のお尻を触ろうとしていた。

うっかりと言うか、ちゃっかりしている太齋先輩のせいで何処まで考えていたのかを忘れちゃったけど、えーっと……?



***


(side.南雲優)


西宮さんとワタシは懲役上がりに食堂で一杯やっていた。

特に会話がある訳では無いが、お互いスマホを見たりしながらポツポツと雑談している。


先ほどからワタシが考えているのは、あーちゃんとの現在位置。


残念な事に、ワタシとあーちゃんは付き合っていない。

あーちゃんは西宮さんと付き合うまではワタシをキープを宣言しているのだが、これは裏を返せばあーちゃんが西宮さんの彼女になると連動してワタシもあーちゃんの彼女になれるという仕組みだ。


――つまり、

あーちゃんが西宮さんと付き合おうが、諦めようが、

ワタシが彼女になることは内定しているのだ。


一見勝ち確にも見えるが、この『内定』というのが非常に厄介で……


現在、ワタシはあーちゃんとつかず離れずの距離を保たされている。

本音はもっとイチャつきたいし、何だったら襲いたいくらい。

でも、ここから無理に距離を詰めた場合、あーちゃんに拒絶されてしまう可能性は高い。


仮に、西宮さんよりワタシを意識させる事が出来ればあーちゃんを奪えるのだが、失敗した場合のリスクはかなり大きい。

……しかもそのリスクは立ち直れないレベル。


待てば100%付き合える。攻めたらおそらく10%くらい?


そりゃ、攻めないでしょ!?

だからこそ、申し訳ないのは茉希ちゃんで……



「……最近調子どう?」


「は?」



なんか西宮さんは訳分からない質問してくるし。

無視だ。無視。


ワタシはストローでイチゴオレを吸って再度、思考を研ぎ澄ます……ん?

待てよ? 西宮さんて、最近茉希ちゃんとよく……



***


(side.北条茉希)


洗濯ものを取り込んでる最中に俺はふと考える。

……と言うか、まぁ。よく考える議題ではあるのだが。


俺が優と付き合う為の条件だ。


幸か不幸か、現状の関係が続いてる俺だがそろそろ本気で考えよう。

……って、毎回言っている訳だが。


と、とにかく。

現状の俺と優の関係は『キスフレ』以上『セフレ』未満。

文字にしてみると分かるのだが、非常にヤバい。


何がヤバいって、どうあっても『フレンド』で何かの間違いが怒らない限り恋人にはなれないのだ。



(……い、いっそ、東堂から寝取ってみる、か?)



アホか俺は!!


――ガコンッ!!


物干し竿に思い切り頭突きした。

すると、心配したお袋が様子を見に来てくれた。



「茉希!? なんか変な音したけど大丈夫か!?」


「すまん! ちょっと物干し竿に喝入れったったわ!」


「そ、そうか……まぁ、よく躾けてやってくれ(?)」


「ま、任せろい!」



……冷静になれ。

まずはタイムリミットについて考えろ。

色々逆算するにおそらく……西宮が東堂の告白を受けると芋づる式に悲劇が掘り起こされる。


そうなる前には何かを動きを起こさないとならない。

だから、俺がすべき事は……


(……西宮が東堂と付き合う条件聞くか!)


いや、その。足を引っ張るとかそう言うんじゃねぇから!!

心構えとか、準備の問題な!!



***


(side.西宮麗奈)


南雲さんとともに食堂でお茶をしている私はふと考える。

……私の中で日に日に茉希の存在が大きくなっている事を。

他の2人に対する『好き』よりも大きいのは間違いない。


正直、かなり癪だわ。


だからと言って、3股する私のスタンスは変えるつもりはないけれど。

まずは、そうね……


茉希と付き合う事を第一に考えた場合の仮説を挙げてみましょうか。


・私が告白する

⇒これはない。癪の極み。


・明里の告白を受け入れる

⇒連動して茉希の決意が固まる可能性がある。危険。


・南雲さんから茉希を寝取る

⇒無理。刺される。命の危険。



あれこれ考えると、やはり茉希の問題は南雲さんが起因するものが多い。


……ふむ。

でも、この2人って別に付き合ってる訳じゃないのよね?

え。今、この人たちって何をしているの……?


ま、まさかセフ……確認してみましょう!!



「……最近調子どう?」


「は?」


(まぁそうようね。そうなるわよね……!)



考えをまとめる前に言葉が出てしまったわ。

会話も終わってしまったし、今度は言葉を選びましょう。



「……ま、茉希とは付き合う気無いの?」


「ぇ……」


(ド真ん中の火の玉ストレートじゃない!?!?)



思いっきり失投したわ……!!

目に見えて南雲さんは動揺してるじゃない!!


……でも待ちなさい。


この反応を見るに付き合ってはないけど、付き合う気はあると言う反応ね。

見えたわ。隙の糸が。


つまり、私が今。やるべき事は――



***







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(※ここから物語に関係ない報告です)





今後の展開的に少しお休み頂くかもしれません。

詳しくは近況のノートに書かせて頂きますので、ご確認頂ければ幸いです。


次話投稿時にこの部分は消すと思います。



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四角い修羅場を丸くする! 伊ノ部ひびき @yurinski-

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