第7話

ある夏の土砂降りの中、お爺さんとその孫が小さなトンネルで雨宿りをしていました。

雨は止む気配を見せず、もうすぐ陽が落ちる時間になってきました。

「じぃじ、もうびしょ濡れだよ。いっその事雨の中帰ろうよ。」

「そう焦るでない。次が最後、クライマックスじゃ。」


雨の中、夜の小道を歩く若い男女のカップル。

トンネルを抜けた先に肝試しスポットとして有名な診療所跡地があり、そこに向かうようだ。

仲睦まじい様子で相合傘をしながらトンネルを抜けていく。

すると途中で彼女の口数が次第に減っていく。

ついには無言になる彼女。

不思議に思った彼氏が彼女の身を尋ねると、

「ねぇ、なんでトンネルの中なのに雨が降っているの…?」


「どうじゃ、最後はちょっとホラー感があっただろう。」

「確かにそうだけどさ…」

「む?どうしたんじゃ。雨に濡れて寒くなってきたか?」

「どうして僕たちは雨宿りしているのにこんなに濡れているの?

最初から、ずっと。

ねぇ、なんでトンネルの中なのに雨が降っているの…?」

途端、お爺さんの身体が不自然に歪み始め、不気味な笑みを浮かべて振り返った。

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カクヨム夏祭り2023 あーでぃん @Ardine

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