第3話 好きな人と添い遂げれるひとはどれくらいいるのだろう?

喧嘩は基本しなかったが、将来を考え始めた話を近頃するようになった。

生む、育てる自由も卵子や精子保存など体外受精など選択肢は増えてはいるものの、

養育し成人と言われる年齢はもちろん、独り立ちする日までを考えれば人それぞれとはいえ、start-pointを決めなければならない。Cash-flowや資産形成の増減を考えながら生活を営むにあたってはどう転ぶかは運しだいだけれど、早く始めたほうが良いのだろう。子供というものが嫌いなわけではないが、欠陥商品なような気がしてこの遺伝子を後世に残していいものか?頭の上のquestion-markがいつもくるくると回りながら点滅している。どの選択肢を選ぶのが良いかはタイミングもあるし、多少の勢いも必要になっているだろう。自分のことを先につらつらとあげてはみたものの、相手の気持ちや考えもあることなので、すり合わせをしなければならない。いつも話にはあがるけれど、具体的な指針には至らないのはなぜか、私が煮え切らないのが一番、後は、仕事がお互い忙しくてしかも、吸収しなければいけないことが多すぎるのでそのことも付随して言い訳になって濁しているのもある。


考えてないわけではないのだ。

ただ今を惰性に任せてその部分を隠して生きていたいのもある。

彌嘉は今回はしびれを切らしたようだ。

流石に勢いに任せてというわけにもいかない。

彼女に気持ちがあるのは理解している、だからといってこのタイミングでというのは

意気地がないと男友達に言われたけれど、そういうのでもない。

責任という名のものならば、将来設計まで考えてラインをひけないわけではない。

でも、この選択をしてもいいのだろうかというのが、いつも頭の横をよぎるのだ。

本当に居て欲しい人、好きな人とは結ばれる確率が少ないのはわかっている。

容姿、性格、能力、資産、会社や地位などを含めたバックグランドを流動的な感情という要因に流されて人は人を好きになる。

ひとそれぞれ思いはことなるのだが

誰かのために何かを投げうって生きることができるのだろうか?

そんな生き方をしたやつは友人くらいしかいない。

とはいっても上司であった人。

大震災の津波の中に流されて亡くなったが、彼女の実家の農家を立て直すために入り婿の様に入って私財をなげうって採算ベースに乗ったところまでは良かった。

彼は彼女のためにそれをしたわけではない。

本当に好きだった人は中通りにいた。感情を度外視にしても馬鹿だと言われていても守りたかった人。

ただ、ただ近くに居たくて心の痛みを彼女の体と心で拭っていただけ。

仕事に対して不誠実であったわけでもない。自分の傷ついて避けそうな胸に代理を立

てても何も変わらなかった。その点に関しては屑だと言われても仕方がない。

それでも億単位の金を注ぎ込んでまで事業としての第六次産業化と特化した希少種の栽培にこぎつけていたところ、販売網も確立してここぞとというときに、全てを波が

浚った。

彼の最後のメールには『伊之、俺は不誠実な男だ。好きな人とは後悔ないように始末つけなければならないよ。お前はいつか話していた彼女とうまくいくといいな。そうあってほしい。俺のエゴだ。自分がうまくいかなかったからって他人のお前に希望を託すのはどうなんだろう。すまん。』今の自分自身も同じようなものだ。いつも心の奥底には本当に好きな人がちらついて、それなのに彌嘉と普通に結婚を意識しながら生きている。

これで、全てを諦めるのもあるし、気持ちに区切りをつけようとしている。

丁度いい塩梅で手を打とうとしている、この安心感を心地よい関係が築ける相手での未来で形作ろうとしているんだ。そんなことを選んだら友人のように天罰が襲うのかもしれない。強くもないのにショットで琥珀の液体をストレートで飲みほすと机にわざと音を立てて置くと、ガラスボールに入ったナッツを掴むと口の中にほおり込むと強引に咀嚼する。

あたりで歯肉を噛んで口内炎になるのもお構いなしに・・・。

案の定、痛みと血の味が広がる。

その痛みで拭きあがるこの不安というか得体のしれない罪悪感を消そうとボトルのキャップを開けて注ぎ、サッと掴むと煽るように立て続けに咀嚼物を流すように、チェーサー用のウィルキンソンで洗う。

すっきりしないが、このかっと火照った感と脳を波打つ脈の音符でごまかそうとして

いる。

伝えきれない気持ちを誰かの厚意、好意ですり替える。

こんなことを多くの人が抱えているに違いない。

ほんまに好きな人と……

どれだけの人が結ばれて、最後まで幸せを通せているのだろう?

幸せと好きは比例しない。

多くの妥協と葛藤と許容が長い年月の間に必要で、その中で小さな幸せの積み重ねが少しだけ優った時、死ぬ前幸せと感じるのだろう。

幸せばかりを繰り返している自分のあざとさと薄さに少し嫌気がさしてくる。

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君にこの思いを告ぐことができるのだろうか? @munehanannapan07782

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