第25話 メメさんの失態
ツバの広いとんがり帽子。とんがりの先っぽは少しへたっている。
襟の大きなマント。裾は地面で擦れてボロボロ。
帽子もマントも外が黒で内側が真っ赤。
それを着ているのは茶色の芝犬。
口にはちょっと欠けた星飾りがついた魔法のステッキを咥えているぞ。
芝犬
メメさんの仕事は困っている人を助けること。
今日も困っている人がいないか
今日も今日とて元気にトテトテ。お花を見ながら河原をトテトテ。走る車を見ながら大通りをトテトテ。電車の走る音を聞きながら線路沿いをトテトテ。
時々街ゆく人にこんにちは。尻尾フリフリ、ワンワワン。
朗らかな天気にメメさんは絶好調。ルンルンで
絶好調なメメさんが立ち止まります。
キョロキョロ。上見て、下見て、お手々見て。メメさんが何かを気にしています。
何かがおかしいぞ。
少し顎を上げ上目遣いで、帽子を被っていることを確認します。
首を捻りマントを着ていることを確認します。
ふむ、 芝犬
でも何かがおかしい。
気のせいかな? 春の陽気に釣られてメメさんも欠伸をかきます。
あっ!! いつも欠伸すると落としてしまうものがありません!!
魔法のステッキがああぁぁぁないぃぃぃぃっっっ!!
メメさん!! 大変です!! 魔法のステッキがありませんよ!!
芝犬
魔法のステッキのない芝犬
呑気に欠伸をし終わったメメさんは魔法のステッキを拾おうとしますが、可愛いお口は空を切ります。
あるはずの魔法のステッキを必死に咥えようと地面に噛み付く攻撃を何度も仕掛けます。
何度も空を切る可愛いお口。ようやくメメさんも事態の重大さに気づきます。
キョロキョロしては、ワン。キョロキョロしては、ワン。助けを求める様に吠え続けます。
大変です。どうしましょう。
「どうしたんだいマイブラザー」
メメさんの祈りが天に届いたのか、助けを求める声が聞こえたのかメメさんと仲の良い女学生の登場です。
メメさんはつぶらな瞳で女学生を見上げ「クーン」と悲しそうな声を上げます。
「よしよし、大丈夫大丈夫」
そう言ってメメさんを撫でてくれる女学生。
「ワン、ワン」
メメさんは寂しい口元を主張するように吠えます。
「……あっ、いつもの杖のオモチャがない!! 無くしちゃったのかー」
ようやく気付いてもらえました。
「んー。どうしよう。とりあえず、今来た道戻ってみようか。どっちから来たか分かる? ワンワン、ワワン」
身振り手振りに加え犬語も添えて女学生は聞いてきます。
メメさんは理解したのか、歩き出しました。地面に鼻先をつけクンクン。
「おー、匂いを辿るんだね柴太郎!! なんか事件を追う探偵みたいじゃないか!!」
柴太郎じゃなくメメさんです。確かに犯人の残した痕跡を追う探偵と助手犬みたいですね。
クンクン、トコトコ、テクテク。
一匹と一人は匂いを辿ります。
クンクン、トコトコ、テクテク。
段々と匂いが強くなり、事件の真相に近づいています。
クンクン、トコトコ、テクテク。
段々とメメさんの足取りも早くなっていきます。それにつれ妙な緊張感が高まっていきます。
あと少しで事件の真相に辿り着ける……そんな期待感がそうさせるのかもしれません。
そして辿り着いた商店街のペットショップ。
カランカラン。扉を開け店内に入ります。
「全て分かっているぞ!! 柴太郎のオモチャを奪った犯人はお前だ!!」
女学生の声が店内に響き渡ります。
「へっ、柴太郎? 犯人?」
いきなり犯人呼ばわりされた店長は困っています。
「さとこちゃん、いきなり何を言っているんだい?」
「むー、ノリ悪いなー。証拠は上がってるんだ!! 神妙にお縄につけー」
「はいはい、これで良い?」
店長は諦めた顔で両手を差し出します。
「うむ。でっ、奪った杖のオモチャはどこだい!!? 大人しく吐いたほうが身のためだぜぃ」
「君は何役なんだい。まったく。あー、その子のやつね。ちょっと待っててね」
店長は奥から魔法のステッキを取ってきてくれました。
「はい。今朝ジャーキー食べたまま置いて行っていたよ」
……この事件の犯人はメメさんじゃないですか?
メメさんは魔法のステッキを店長から受け取って嬉しそうにしています。
「ワン!! ワン!!」
飛び上がりながらお礼を言います。
もちろん魔法のステッキは床に落ちます。
「よかったなー柴太郎」
メメさんを撫でながら女学生が言います。
魔法のステッキ喪失事件はこうして幕を閉じたのであった。
メメさんは助けてくれた2人に対して魔法のステッキを一振り。
どんな願いがかけられたのでしょうか?
ツバ広いとんがり帽子。襟の大きなマント。口にはちょっと欠けた星飾りの魔法のステッキ。
芝犬
芝犬ウィッチ @syu_dd
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