第10話 サタンの手

『あれから、何か掴めたの? 組織のこと?』


『リンガが調べてるけどね。まだ分からないらしいよ』


 この前の王都襲撃以来、敬語で話すのをやめて欲しいとシルマ様にお願いされたので、最近は普通に話すようにしている。会話は全部竜語だけど。


 あれから、アジトなどを詳しく調べると誰かに指示を受けて襲撃を企てたことがわかったそう。それが分かっただけでそれ以外は何も分からないんだとか。


 ただ一つ組織の名前は判明した。

 名は『サタンの手』。

 サタンとは数百年前に勇者に寄って倒された魔王の名前なんだって。


 何者かがサタンを復活させようとしているという事なのだろうか。リンガ様はその勇者の末裔なんだとか。


 それと竜騎士という事もあって注目を浴びる存在となっているんだそうだ。そんな人と結婚したなんて私は幸せ。


「おーい。ティータイムにしないか?」


 リンガがやって来た。脇にはアリスが付き添っている。


『おいおい。竜騎士様に美味いお茶が入れられるのか?』


『アリスがいるから大丈夫よ』


「おいおい。俺を馬鹿にするのもいいかげにしろよ? ティーぐらい入れられるわ!」


 そう断言すると紅茶の入っているティーポットを少し回すとカップに少しずつ注いでいく。

 三つのカップにそれぞれ同量を入れていく。


 思ったよりちゃんと入れられるみたいで内心驚いたわ。実はちょっと無理じゃないかなと思っていた部分があったの。


「お上手でございます。リンガ様。それでは、私は失礼します」


 アリスが部屋から出ていくと先程の話に戻った。


『リンガ、あれから何かわかったか?』


『いんや、まだ組織名くらいしか判明してない。めんどくせぇのよ。だいぶ潜るのが上手いみたいでな』


 シルマの質問に顔を顰めて答えるリンガ。


『何故、この王都を狙っているのですか?』


『それなんだがな。今回襲われたことで隠しておけないと思ったんだろう。王が白状したわ。実は数百年前に消滅させたサタンは、実は消滅ではなく、封印だったらしい』


 私はそのリンガ様の言葉にパニックになった。

 今まで国民にずっと嘘をついてきていたと言うことでしょう。

 いきなりそんなこと言われても理解に苦しむ。


『その封印が王城にでもあんのか?』


 シルマ様の問いに更に驚愕してリンガ様を見る。すると、頭を頷いた。


『ご名答。王城の地下に厳重に保管されたサタンの封印物があるらしい』


『それを知っているものは?』


『王族と、俺だけ』


 なるほど。それなのに襲撃を受けるってことは、何者かがその封印があることをリークしたということね。


 組織は恐らく封印を解除してサタンの復活を目論んでいるという事でしょう。

 そして、王族に内通者がいるということ。それの炙り出しもしなくちゃならない。


『めんどかクセェのがよぉ。王族の内通者探しなんだが。もう既に内部紛争みたいな感じになっててよ。疑心暗鬼になってるらしいんだわ』


 みんなが皆を疑っているということなんでしょう。


『そうなっても仕方ありませんよねぇ』


『まぁなぁ。なんかやり方を考えなきゃならんだろう。ただ、内通者はバレたくないだろうから必死に隠すだろうし。しっぽを掴むのは難しいだろう』


『では、どうするんです?』


『うーん。受け身にならざるを得ないかなぁ』


『それなら、警備を強化しましょう! そして、何かあった時は魔法士の協力と兵の協力、そして冒険者の協力を約束してもらうんですよ!』


 私の言葉に顔を顰めると口を尖らせた。


『冒険者の奴らは金がかかるんだよなぁ』


『国に払ってもらえばいいでは無いですか』


 それは妙案だとばかりに手を叩いてリンガは立ち上がった。


『そうだよな! ちょっと出てくるわ!』


 慌てて出ていくリンガを見送って紅茶を飲む。


『騒がしいやつだな?』


『ふふふっ。でも、国の為に一生懸命で誇らしいです』


『まぁな。俺も見回りに行ってくるかな。一緒に来るか?』


『はい! 背中をお借りします!』


 背中にまたがると青く広がる空に舞い上がって行った。




           序章 完

 

 竜との生活は突然に~竜に好かれたので竜騎士と結婚することになりました~


 お読みいただきましてありがとうございます!

 序章がここまでとなります。

 嫁入りからのセカンドライフ中編コンテスト用の作品となりますので一旦完了とさせて頂きます。

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竜との生活は突然に~竜に好かれたので竜騎士と結婚することになりました~ ゆる弥 @yuruya

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