この苦しみの果てにあるハッピーエンドに期待!

従属制度のある世界で、競売にかけられたヒロイン、ジャンヌ。
元々良家出身だった彼女が隷属に身を落とし、その矜持の何もかもを奪わそうになったところで、ジャンヌは魔族の少女に助けられます。少女は森の奥に暮らす魔王の従者でした。このまま隷属として惨めに死ぬか、魔王に媚びを売って生き残ってみるか。ジャンヌは少女と共に森の城に行くことを選ぶのですが、その裏で「魔王なら、自分を殺してくれるかもしれない」と期待しているのです。タイトルにもあるように、ジャンヌは死を望んでいます。でも自死は信仰に反する。だから自分を殺してくれる誰かを望んでいるのです。
ですが彼女を待っていたのは人を食う魔王ではなく、麗しい青年ループレヒトでした。ここから死にたがりのジャンヌのセカンドライフが始まります。

第一章はとことんしんどいです。というのも、隷属の解像度が高い。人権を徹底的に粉々にされた人々の様子が生々しく描かれています。もしかしたら繊細なお嬢様方には刺激が強いかもしれません。でも私は、「隷属」というセンシティブな題材をエンタメのための都合の良い属性として利用しない作者様の姿勢に感服しました。きっと書き手にも覚悟が必要な題材だと思うからです。
第二章で孤城の主ループレヒトと結婚して溺愛スタート!かと思いきや、やはり焼き付けられた従属の刻印は簡単には消えないのです。でも、それは当たり前のことだと思います。たった一日で人はお姫様にはなれません。
そして第三章で、ジャンヌは「死」以外で自分が望むことを見つけます。ここから彼女がどうやって変わっていくのか、続きが気になるところで終わってしまっているので、コンテストの文字数制限が憎いですね……。

ファンタジーの中にもリアルさが欲しい読者様にお勧めの一作です。ぜひご一読ください!