第8話 白雪澪

「———ダメだ。お嬢様に近付く者は誰であろうと通しはしない」

「いや、俺らはお嬢様じゃなくてクラス表が目的なんだって。お嬢様には1ミリも触れないから通してくれません? 何なら横にオジサン達ついて来てていいからさ」

「ダメだ」

「コイツめんどくせぇ!!」


 何だよこの話の通じない頑固な奴ら!

 正直クソ邪魔なんだけど!

 何だよあのお嬢様が居なくなるまで誰も見なれないとか言うのか!?

 頭おかしいだろ!

 

 俺が憤慨していると、スーツ姿の男3人が俺と華恋を取り囲む。

 そして敵意をむき出しにして俺の顔を覗き込む様にサングラスをずらしながらガンを飛ばして来た。


「ダメなものはダメだ。良い加減に我儘言ってると力尽くで諦めて貰うことになるが?」

「勿論そこのお嬢さんにも容赦はしないぞ」

「———あん? 俺の聞き間違いか? 今なんつった?」

「「「っ!?」」」


 3人組が驚いた様にサングラス越しに目を見開き、飛び退く様に俺達から離れた。

 だが俺にはそんなことどうでも良かった。


 コイツら……もしや今、華恋に危害を加えようとしたか?

 咥えようとしたよな?

 ウチの世界一可愛い華恋に。


 ———よし、るか。


 俺は目をスッと細め臨戦体制に入る。

 勿論華恋には1ミリも加害の加わることない様に細心の注意を払いながら、だが。


 そんな一触即発の空気感の中———凛とした声がこの空気を壊した。



「———これは……どう言うこと? 私がクラス表を見ただけで何が起きたわけ?」



 その声の主は———男3人組がお嬢様と呼ぶ白雪澪本人であった。

 威厳溢れる声に気圧された護衛(か知らんが)は、額に汗をかきながら報告を始める。


「はっ! あの男子生徒と女子生徒がお嬢様が居るにも関わらずクラス表を見に行こうとしていたので止めた所存です!」

「だから、お嬢様には触れないって言ってんだろ。何ならアンタらが隣に居てもいいとも言ってんじゃん。頭湧いてんのか? てか、大体アンタら必要なのか? お嬢様の方が断然強いじゃねぇか」

「お、お前ッ———」

「———やめなさい」


 激昂して俺へと掴み掛かろうとして来た黒服の男に……白雪さんが、いつの間にか取り出していた白銀の剣を首元に添えていた。


 男は勿論動けない。

 そして俺はまさかまさかの出来事に、怒りがより驚きが勝った。


「はぁ……もう良いや。また後で見に来るから。すまんな、華恋……兄ちゃんのせいで余計なことに巻き込んで」

「ううん、おにぃが私のためにやってくれようとしたの分かってるからいい。また後で一緒に見よっ!」

「やっぱり華恋は世界一可愛いなぁ……」


 俺が華恋の健気さにストレスを一気に浄化されていると……突然白雪さんが緊張した趣きで呼び止めて来た。


「———あ、あの……!」

「ん? あ、白雪さんだっけ? なんかごめんね、余計なことさせちゃって」

「そのことはアイツらが悪いのでどうでも良いわ。アイツら邪魔だから。それより……貴方達は兄妹なの?」

「お、おお……」


 この子……結構な毒舌だな。

 後ろで男3人組がショック受けてるぞ……。


 何処か輝いている様に見える碧眼で俺と華恋を何度も見つめる、お嬢様改め白雪さん。

 何が何だか分からず兄妹一同ソワソワしていると……白雪さんが自身の変な行動に気付いたのか若干恥ずかしそうに顔を背けた。


「じ、ジロジロ見つめて悪かったわね……」

「は、はぁ……別に良いけど……それで何の用なんだ?」

「あ、えっと……あ、貴方達の名前を教えてくれるかしら?」


 期待の篭った瞳を俺達兄弟に向けてくる白雪さんに、突然の意味不明なお願いに完全に理解能力を失った俺と華恋は首を傾げる。

 同時に、周りの生徒も黒服の奴らが何故か途端にどよめき出した。


「あ、あの『冷徹の女勇者』が名前を聞いただと……!?」

「誰かに興味持ってるの初めてじゃないか!?」

「やべぇ! 誰だよあの2人!?」

「おい、誰か知ってる奴いねぇのか!?」


 どうやらこれは異例のことらしい。

 ただ、美少女に名前を訊かれて答えない男などこの世に存在しない。


「どうも、朝霧朔夜あさぎりさくやです。こっちの可愛い子が俺の妹の華恋」

「……宜しくお願いします」

「朔夜と華恋ね、覚えたわ。それと私の名前は白雪澪よ。また後で会いましょう」


 白雪さんはそれだけ言うと、黒服の男達に鋭い視線を向けて「何突っ立ってるの」と言い何処かへ颯爽と行ってしまった。

 そんな彼女を追い掛ける様に3人がそそくさとこの場を去る。


「…………何だったんだ……?」

「おにぃ、それよりクラス表見よ! 今なら空いてる!」

「おーほんとだ。じゃあ見に行くか」

「うんっ!」


 俺は周りの視線やひそひそ話を意識的にシャットアウトして、華恋に引っ張られながらクラス表の貼ってある掲示板へと向かった。


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