第50話
涼は元気よく『Sternen zelt』に出勤する。
「おはようございまっす!」
「涼くん、気合入ってるね!?」
ジーンは苦笑いで言う。
「そりゃ、今日は親友が来ますからね」
涼の目がキラキラしている。
「親友が大好きな調味料も持って来たんです、喜んでもらいたいから」
「えっと、それは……」
ジーンは苦笑いする。
それは、タバスコの瓶だった。
「辛いの好きな人なんだね、お友達」
「辛いのも甘いのも好きですよ、タケは。それにこれ、ただのタバスコじゃないんです」
涼は笑って言う。
ジーンは不思議そうに首を傾げた。
尊はパソコンのメールを再度確認する。
「そろそろ時間だよな……、案内のメールを送るって言ってたけど……、どうやって行くんだ?」
尊は不思議そうにメールを待つ。
「お、来た!」
そして、届いたメールを開いた。
「なになに? リンクを開くだけ?」
尊はリンクをクリックする。
まるで目眩でも起こしたかのようにぐにゃりと視界がゆがむ。
「な、なんだ?」
尊はただ呆然と立ち尽くす。
ザザーン、ザザーンと波の音が響く。
「なんだ? ここはどこなんだ?」
尊はハッとして周りを見渡す。
見渡す限りは海しか見えない。
そこに、ざりざりと砂を踏みしめる音が聞こえる。
「ん?」
尊が振り返ると、そこには懐かしい顔がいた。
「あなたが、なぜここに?」
「梨那、久しぶりだな!」
梨那は笑顔を見せる。
「元気そうでよかったわ」
「いつ以来だ?」
「高校卒業して以来じゃない? でも、どうして尊がここにいるの?」
「涼に『Sternen zelt』って店に招待してもらってさ」
「そこ、私も今から行くの。一緒に行かない?」
「おう、そうする!」
尊は梨那と歩きながら話す。
「さてと、あとは盛り付けと」
涼は心底楽しそうに盛り付けをしている。
「それにしても涼くん」
「何ですか?」
「盛り付けるのが上手になったね。キレイだよ」
「店長、ありがとうございます」
涼は照れ笑いをしながら手を止めない。
「あとは仕上げに……」
軽くタバスコをかける。
「ん? なんだかハーブのような匂いが混ざっていないかい?」
「そうなんですよ。バジルを少しとレモンを少し混ぜた、俺お手製のタバスコなんです」
「なるほど、それなら爽やかでいいね」
「何度も試行錯誤して、これが一番バランスよくできたんですよ」
ジーンは興味深そうに見ている。
「よかったら、店長も少し味見します? レシピも必要なら書きますよ」
「ありがとう!」
ジーンは喜んで小皿にタバスコを出して味見する。
「思ったよりまろやかだね。ちょっとだけピリッとするくらいで、辛いのが苦手な人でもいけそうだね」
「それは良かったです。じゃあ、あとでレシピ書いて渡しますね」
「助かるよ」
「あそこが『Sternen zelt』よ」
「もう着いたの? 話しているとあっという間だね」
「そうね。じゃあ、私はあっちに行くから」
「え?」
「私、今ここでバイトしているのよ。じゃあ、後でね」
「え? 梨那もここでバイトしてたのか!?」
梨那はすでに裏口の方から入店している。
「おはようございます……、涼早いのね?」
「うん、タケが来るのが楽しみすぎてさ」
「ちょうどさっき会ったわ。尊も楽しみなんじゃない?」
梨那はそう言って更衣室へ入って行く。
「さあ、仕上げるぞ!」
涼は笑顔で言う。
港の定食屋『Sternen zelt』 金森 怜香 @asutai1119
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