『アースセーバー ~金色の継承者~』は、過去を忘れた未来で、それでもなお“地球”という概念が静かに脈打ち続けていることを、少年・昴の覚醒を通じて私たちにそっと囁いてくれる物語です。
日常に潜む非日常。それはいつだって唐突に、けれど不思議と必然のように訪れる。転校生・未来との出会い、頼りなくも温かな由布子の想い、当たらない予知夢に振り回される鋼のドタバタ――こうした笑いと切なさの交錯が、日々という儚い時間に優しい余韻をもたらします。
何気ない学園生活に、やがて呼び戻される“かつての記憶”と“金色の継承”。それは世界の運命であると同時に、少年の心が目覚めていく内的な旅路でもあります。誰かの想いが誰かの痛みに変わることもあれば、その逆もまた然り。だからこそ、選択することに意味が生まれる。
“忘れられた星の記憶”は、きっと誰の心にも存在する。これは遠い未来の物語でありながら、いま私たちが失いかけている「何か」を照らす、かけがえのない星屑のような作品です。
本作は学園を舞台に、仲間たちと共に超常的な戦いに挑むファンタジー・アクション作品です。明るく軽妙な会話が繰り広げられる一方で、シリアスな戦いが展開され、キャラクターたちの信念や成長が深く描かれています。
コミカルな掛け合いと緊張感のあるドラマのバランス。昴と由布子の掛け合いや柳崎の突拍子もない発言には思わず笑ってしまう場面がある一方で、戦いが激しくなるにつれ、それぞれの想いが交錯する展開に引き込まれます。対立する人物にも明確な信念があり、単なる敵味方ではないドラマが生まれています。
登場人物の心情や絆の描写が丁寧で、物語に深みを与えています。それぞれが抱える過去や想いが明かされるにつれ、読み手は感情移入させられます。終盤には意外な人物の登場があり、物語の余韻を残します。
戦闘の緊張感と仲間との温かなやりとりが魅力的な作品。読後には、登場人物たちの未来をもっと見守りたくなるような余韻が残ります。
超常現象や異能力がすぐ傍にある、それでも平穏だった世界で。
普通に学生をやっていた昴の身に、おかしなことが立て続けに起こり始めます。超能力姉妹(しかもちょっと常識外れな)に、自分の偽者、そして異形の怪物!
昴は果敢に立ち向かいます。大切な者たちのために。
そうできるよう、これまでずっと努力してきたのですから!
物語の時系列的には、『スカーレット ~青の護り手~』の後となります。スカーレットを読まれた方は勿論、アースセーバー単体でも楽しめるお話になっています。
登場人物たちそれぞれに個性があって、敵対する相手にも信念とバックボーンが垣間見えるのが素晴らしい。色々と想像力を掻き立ててくれます。
日常から非日常へ、怒涛の展開で飽きさせませんし、ふと力を抜かせてくれる笑いもあるのが楽しいです。
何より、彼ら彼女らの前向きな気持ちが実に清々しく、心地良いです。
上っ面の言葉ではない、物事に立ち向かう彼らの真摯な声が、とても美しいのです。
自分の身近にある大切なものを、改めて見つめ直せるような。
そんな熱いお話で、読了感も爽やかですよ!
お薦めします(^^)!