第52話 最期

 あれから何十年経っただろうか。僕は自宅のベッドで家族に介護をしてもらう歳になった。

 孫はまだ小さいが、僕の話を楽しそうに聞いてくれる。

 数年前に患った病気でもう長くないが、こうして家族に囲まれていられる今は幸せだ。

「おじいちゃん、あのおはなしして! きょーがわるいのたおすの!」

 孫は僕が三獣隊にいた頃の話が好きで、特に匡さんがお気に入りのようだ。この話をしてからおもちゃの剣を二つ買ってもらい、匡さんごっこをしているらしい。悪魔は主にお父さんにしてもらっているのだが、たまに脛のあたりに青あざを作っているのを見ると、孫は容赦しないようだ。

「本当にこの話が好きだね。匡さんのようになりたいのかい?」

「うん! それでわるいやつをやっつけるの!」

 一緒に遊んでやれないが、この話をしてあげることはできる。だが最近死期が近づいているのか、夢に匡さんが出て恥ずかしいから止めろと言うのだ。

 子供は苦手なのだろうか。

「おじいちゃんがこの話をすると、夢に匡さんが出てきちゃうからなあ」

 話そうか悩ましい、と言うと孫は匡さんが夢に出てくることに興奮してはしゃぎだした。

「いいな! ぼくもきょーにあいたい!」

 思わず死ねば会えるよ、なんて口を滑らせかけてなんとか我慢した。僕に似てアホなところがあるので、自殺しかねない。

 さすがに先に孫が逝くのは堪えられない。

「いつか会えるよ。おじいちゃんくらいになれば、必ず……」

 夢で匡さんに会う回数が増えてきたので、最近は死ぬ準備を始めている。終活だ。孫や息子夫婦と一緒にいられる今も幸せだが、三獣隊に戻るのも楽しみだ。

「ああ、贅沢ものだな……」

 死ぬことが楽しみなんて言うと誤解があるが、精一杯人生を楽しんだ後にもまだ楽しみがあるのは僕だけだろう。

 あの日からずっと考えていた、現世に帰された時の仕返しをするのが楽しみでならない。

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死神直属機関三獣隊 朝乃倉ジュウ @mmmonbu

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