第六話 初舞台
ああ、浮かんでくる。言葉が、この気持ちの表現法が。
ああ、解る。その場の空気が、【観客】の感情が。
「言い訳はしない。する必要もない。【忌み子】は彼女を構成する要素のうちの一つだ。」
僕は別に彼女が俗に言う忌み子であることを否定するつもりはない。
「そう、白髪赤目や【忌み子】だって、10歳、髪が長い、背が高いなどと同じ、なんてことない要素の一つなんだ。」
「別にそいつは背が高くは「うるさいよ!そこ!」ない…」
「ゴホン、話を戻そうか。」
彼女は、ただ忌み子だというだけで差別されている。
「もう一度言おうか。彼女は、何も悪いことをしていない。なんてことない生まれ持った一要素だけで、蔑まれ、虐められている。」
そんな現状が悲しい、悔しい。
「…みんな、一度だけでいいから、忌み子じゃなくて、彼女を、アリアを見てみてほしい。」
「彼女は、忌み子である以前に、アリアという個人だ。」
「一つの要素だけを見て差別せず、その人の、事の、本質を見て欲しい。」
「言いたいことは、伝えたいことは、以上だ。」
言い切った…
緊張の糸が切れた僕は、それを隠すようにしてその場を離れる。
レイアは、置いてきた。
あの場の空気は支配した。
きっと、大丈夫。
彼らは、まだ、やり直せる。
僕はそんなあやふやことを考えながら、寝室までふらふらと戻り、布団に向かって倒れ込んだ。
迷宮深部でサーカスを たし @tasitasi
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