エピローグ
伊織さんとの出会いは良いものとは言えない。
あの時の私酷かったもん。
髪も無操作に伸びてて、ボサボサ。セーラー服もボロボロ、靴下で歩き回ってるし、全然ご飯食べてないから痩せこけていたし。
何より、お風呂全然入ってなかったから絶対臭かった!
もう、やだぁ。
伊織さんもしっかり覚えていた。恥ずかしい。でも嬉しい。
公園で見かけた時は、私と同じ人だと思った。
何もかもに絶望していた。
でも、それなのに、伊織さんは私を助けてくれた。
ご飯を食べさせてくれるだけじゃなく、お風呂まで貸してくれた。
優しい人。そして、とても暖かい人だと思った。
『じゃ、警察所行くか』
『あ、あの、お礼させてください!』
伊織さんにそう告げられて、私思わずそう叫んでいた。
『いや、いらん』
でも、あっさり断られて。
『い、いえ、ここまでしてもらって何もしないのはっ』
でも、譲れなくて。
『……お前もお金が目的か?』
どうして、そんなに辛そうなの?
どうして、そんな苦しそうなの?
『ち、違います!本当にただお礼を!』
助けたいって思った。私が助けられたように。
優しい伊織さんがこんな顔をしていいはずがない。
『だから、いらんって言ってるだろ』
それでも、拒絶される。
ど、どうすれば……
『じゃ、じゃあメイドになります!ここで雇ってください!』
自分でも何を言っているのってなった。
でも、もう言ってしまったから引き返えせない。
『何言ってんだ?そもそも、お前家事できるのかよ』
『できます!!』
……嘘です。全く家事できません。
でも、ここでできないって言ったら本当に追い出されそうなので虚勢を張った。
『お金はいりません!』
さっき、お前もお金が目的か、と言ってた時の伊織さんの表情が脳裏に残っていたから。
『は?』
『ここに住ませてください!』
改めて思い返すと無茶苦茶なこと言ってるなあ。
『ダメだ。他のところでいいだろ』
ほら、呆れてるよ。
『ここ以外なら死にます!今日から私の生き甲斐はあなたに尽くすことです!』
これも、少し嘘。死にはしない。それに、私の生き甲斐は尽くすことじゃなくて、伊織さんの隣に立つこと。
今は、できない。伊織さんは何かを抱えているから。
でも、いつかそれを解決できたら、隣に立ちたい。
一緒に笑い合いたい。
だから、私は『メイド』という立場を利用する。
この関係は、私と伊織さんを繋ぎ止めるための鎖。
友達未満のメイドでなきゃ、今の伊織さんの傍にはいれない。
『……勝手にしろ』
勝手にします!
◆
いつからかは分からない。でも、いつの間にか胸にあった。
私は、伊織さんのことが――
だからね、
「私と結婚してください」
こんな駄メイドでもいいですか?
助けた女の子がメイドになったんだが、家事スキル0の駄メイドだった 猫丸 @nekomaru2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます